【DeNA(2432)】誰もが誤解する「信用倍率40倍」の正体:個人が身を軽くした裏で、外資系ファンドが抱える「794万株の爆弾」


株の掲示板や証券アプリの画面を開いたとき、「信用倍率40.88倍」という数字が目に飛び込んできたら、どう感じるでしょうか。

「うわ、個人の買い残がパンパンじゃないか。これじゃあ上値が重くてとても買えないな……」

おそらく、多くの人がそう思って画面を閉じてしまうはずです。でも、ちょっと待ってください。その数字だけで判断してしまうのは、氷山の一角だけを見て船の進路を決めるようなものかもしれません。

実はいま、ディー・エヌ・エー(2432)の水面下では、表面の数字とはまったく逆の、とても面白い駆け引きが繰り広げられているんです。

まず、なぜ「40.88倍」なんていう極端な数字が出ているのか、そのタネ明かしからいきましょう。これは個人投資家の「買い」が増えすぎたわけではなく、単純に個人の「空売り(約4万株)」が極端に少ないため、割り算のトリックで倍率が跳ね上がっているだけなのです。

むしろ、個人投資家の懐事情は驚くほどスッキリしています。1年前の2025年10月末、個人の信用買い残は約856万株もありました。まるで引っ越し前の詰め込みすぎたクローゼットのように、今にも扉が壊れそうな状態だったわけです。しかし、そこから1年かけて断捨離が進み、現在の買い残は約166万株。なんと8割以上も減り、過去1年でいちばん身軽な状態になっています。「上がったらすぐ売って逃げたい」という個人の待ち伏せが、ほとんどいなくなっているんですね。

では、その一方で「プロの投資家」である海外の機関投資家たちはどう動いているのでしょうか。ここがいちばんの見どころです。

個人投資家がすっかり荷物を下ろした横で、機関投資家たちは合計で約794万株(発行済株式の約7.67%)もの巨大な空売りポジションを抱えています。個人の信用買い残(約166万株)と比べると、実に4.8倍もの規模です。表面上は「買いが多い」ように見えて、機関投資家の分まで含めた本当の綱引きで見ると、実は圧倒的に「売りの方が多い」という逆転現象が起きているのです。

機関投資家たちの顔ぶれと動きを覗いてみると、三者三様の思惑が透けて見えてきます。

まず、この売り陣営のツートップに君臨しているのが、モルガン・スタンレー(約256万株)とバークレイズ・グループ(2社合計で約262万株)です。この2大巨頭だけで全体の約65%を握っていますが、9月中旬から10月にかけての足取りを見ると、少しずつ、慎重に買い戻しを進めています。
さらにハッキリと「撤退」に動いたのが野村インターナショナルです。9月中旬には約201万株もの空売りを持っていましたが、10月5日に1日で約88万株を一気に返済するなど、猛スピードで手仕舞いを進めました。

「株価が2,500円前後でなかなか崩れないぞ。深追いは禁物だ」

そんな空気を感じ取って、利益確定やリスク回避に動いたのかもしれません。

ところが、そんな撤退ムードのなかで、ただ1社だけ逆走している強気なプレイヤーがいます。ゴールドマン・サックスです。他社がポジションを減らすのを尻目に、9月中旬の1.23%(約127万株)から10月中旬には1.70%(約175万株)へと、一貫して空売りを積み増してきました。「まだここからは上がらない、むしろ下がるはずだ」と、真っ向から勝負を挑んでいるわけです。

さて、この状況、あなたならどう読み解くでしょうか。

個人投資家の「売りたい荷物」はすでに166万株まで軽くなり、ちょっとした悪材料が出てもパニック売りが連鎖しにくい、底堅い地盤ができています。そのすぐ頭上には、機関投資家がいつか必ず買い戻さなければならない「約794万株の空売り」が、乾いた薪のように積み上がっています。DeNAの普段の1日の出来高が100万〜150万株ほどですから、機関投資家が全員で出口に殺到したら、それだけで5日〜8日分の出来高を飲み込んでしまう計算です。
そして運命の分かれ道になりそうなのが、11月10日に控えている中間決算です。

もし決算で少しでも良いニュースが飛び出せば、邪魔をする個人の売り物が少ないぶん、機関投資家たちが慌てて買い戻しに走る「踏み上げ(ショートスクイーズ)」のロケットに火がつくかもしれません。それとも、ただ1社だけ売り増しを続けていたゴールドマン・サックスの読みが当たり、決算を機に株価が頭を抑え込まれるのでしょうか。

表面の「信用倍率40倍」という数字の裏に隠れた、身軽な個人と、巨大な売りを抱えた外資系ファンドのにらみ合い。11月10日の決算発表に向けて、機関投資家たちがこれから買い戻しを急ぐのか、それともさらに売り向かうのか、毎日の残高変化から目が離せませんね。