​「人がすぐ辞める会社」の社長がやりがちな致命的ミス【DMM亀山会長】



「採用はうまくいくのに、なぜか人が定着しない」

組織を率いたことのある人なら、一度は胸が締めつけられるような思いでこの壁にぶつかったことがあるはずです。手塩にかけて育てた頼もしい部下ほど、ある日ふっと「次の挑戦をしたいんです」と去っていく。

YouTube対談でしゅんダイアリー氏が吐露したこの生々しい苦悩に対し、DMMグループ創業者の亀山敬司会長が返した言葉の数々は、組織論の教科書には載っていない血の通った示唆に満ちていました。

人が辞めていく本当の理由とは、いったい何なのでしょうか。


「いい人」だけど、ついていけない

去っていく社員の多くは、別にリーダーを人間として嫌っているわけではありません。「社長のことは好きだけど、自分の将来を考えたときに不安になる」――残酷ですが、これが本音です。

たとえば、どれだけ優しくて魅力的なパートナーでも、生活を支える稼ぎや将来への見通しがまったく立たなければ、一緒に家庭を築くのは怖くなりますよね。会社と社員の関係もまったく同じです。

社員が求めているのは、単なる居心地のよさではありません。「この船に乗っていれば、自分の収入が増えたり、新しいスキルが身についたりして、未来がひらけるかもしれない」という実感です。会社の売上や事業領域が広がり続けない限り、分配できる給料の原資も、部下に任せられるポジションも頭打ちになります。

成長が止まった船からは、優秀な船員ほど先に降りていく。痛烈ですが、まずはこの現実を直視しなければなりません。


「留守」を組織づくりの武器にする

では、人を残すためにリーダーは何ができるのでしょうか。

亀山会長が自らの創業期を振り返って語ったエピソードが非常に痛快です。当時、自分が1か月ほどプライベートで会社を空ける際、なんと「留守中の自分の役員報酬」を社員たちに山分けしたのだそうです。
「俺は休むから、この分のお金はみんなで分けてくれ。その代わり、この範囲の決済は自分たちの判断で進めていいからね」
そう伝えて任せてみる。数万円でも手取りが増えれば社員は嬉しいですし、「社長がいない間、自分たちで回さなきゃ」という心地よい緊張感が生まれます。失敗しても、多少のズレなら責めずに受け止める。
権限委譲とは、会議室で大真面目に「今日から君に任せる」と宣言することばかりではありません。リーダーが不在にする時間そのものを、部下が主役になる機会へ変えてしまう。そんな軽やかな仕組みづくりこそ、初期の小さな組織には効くはずです。


自分の「器」以上の人間は、必ず去る
それでも人は辞めます。

亀山会長の言葉で最もズシンと響くのが、「自分の器量より上の人間は、基本的に辞めていく」という指摘です。リーダーのキャパシティという器から、社員の成長スピードが溢れ出してしまうからです。

もしあなたが現場でモノを作ることが大好きな「クリエイター気質」なら、数字の管理や組織マネジメントをすべて一人で抱え込むのは無理があります。現場に過度な思い入れを持たず、冷徹にビジネスを回せる右腕を立てて、実質的な舵取りを任せてしまうのも立派な経営判断です。

辞めていく人を見送るたびに、「あんなに目をかけてやったのに、裏切られた」と相手を責める人がいます。

けれど、それは一番やってはいけない思考停止です。裏切られたのではなく、シンプルに「見限られた」だけ。そうやって責任を自分に引き受けられる人だけが、少しずつ器を広げ、組織をマシにしていけます。


経営者の苦悩は、部下に見せるな

そして対談の最後に残された、最も重い宿題。それが「弱音の扱い方」です。

最近は「弱みを見せるオープンなリーダーシップ」がもてはやされることも増えました。しかし、亀山会長のスタンスは明確です。「親が子どもの前で弱々しい姿を見せないように、経営者も部下の前では不安を隠してどっしり構えるべきだ」と。

リーダーが「どうしよう、不安だな」とこぼせば、社員と友達のような距離感にはなれます。優しく共感もしてもらえるでしょう。

でも、明日から命を預けて走るリーダーとして頼もしく映るでしょうか?

不安は伝染します。どんなに心の中がグラグラしていても、部下の前では「大丈夫だ、俺についてこい」と言い切る。孤独を引き受け、見栄を張ってでも前を歩き続けること。それこそが、ついてきてくれる仲間に対する最低限の責任なのかもしれません。

完璧な組織など最初から作れません。100人入って90人辞めても、残った10人と以前より少しだけ良い景色を見る。出会いと別れを繰り返しながら、泥臭く強くなっていくしかないのです。