​予算超過と効率化の狭間で。小島プロ・ソニーのすれ違いとレベルファイブAI炎上の根底にあるもの


最近のゲーム業界、なんだかざわついていますよね。

今回は、ちまたを騒がせている2つの大きなニュースについて、私なりの視点を交えながら紐解いていきたいと思います。 どちらも一見まったく違う話題ですが、根底には現代のゲーム開発が抱える「ある共通の悩み」が隠れています。

さっそく、一つ目の話題から見ていきましょう。


小島プロとソニーの突然の別れ。一体何が起きたのか?
メタルギアシリーズで知られる小島秀夫監督のスタジオが、新作『Physint(フィジント)』の開発において、長年のパートナーだったソニー(PlayStation)と手を切り、Microsoft(Xbox)と組むことになりました。

『Physint』は、スパイとして潜入するような「アクションエスピオナージ」と呼ばれるジャンルの完全新作です。 当初はソニーのイベントで華々しく発表されたため、誰もがPlayStationから出るものと思っていました。 ところが、ソニー側から突然「プロジェクトから手を引く」と宣告されてしまったのです。

ちょっと想像してみてください。こだわりのマイホームを建てている最中に、突然銀行から「もう融資できません」と言われるようなものです。

小島監督にとっても、これはスタジオの存続、ひいては200人のスタッフの雇用を揺るがす死活問題でした。 最終的には映画や音楽などあらゆるメディアを視野に入れた大きな企画として、Xboxという新たなパートナーを見つけて事なきを得ました。 しかし、なぜソニーはこれほどの大作を途中で手放したのでしょうか。

海外メディアのブルームバーグは、関係者の話としていくつかの理由を報じました。 それは、「予算や収益性への懸念」「過去作の売上が期待に届かなかったこと」「スケジュール遅延による予算の大幅超過」などです。 さらに、「PlayStation独占ではないゲームに数億ドル(数百億円)もの巨費を投じることに消極的だった」とも伝えています。

これに対して、小島プロ側は「公式な記録に基づかない情報には疑念を持ってほしい」と声明を出しました。 一方で小島監督本人は、「理由は知らされなかった。全く予想しておらず、突然のことでショックだった」と語っています。

一見、両者の言い分が食い違っているように見えますよね。

しかし、実は誰も嘘をついていない可能性があります。

現代の超大型ゲーム開発において、当初のスケジュールや予算をオーバーするのは日常茶飯事です。 ソニー側からすれば「また遅延ですか? 予算は大丈夫ですか?」と厳しい交渉を何ヶ月も重ねていたはずです。 だからこそ、ソニーにとっては「話し合いの末の決断」でした。 一方、小島監督からすれば、予算や納期の厳しい交渉はいつものこと。 だからこそ、「まさか本当にプロジェクトごと打ち切られるとは」と突然の宣告に感じたのでしょう。 この視点の違いが、すれ違いを生んだのだと思います。

さらに、ソニー側の事情も変わってきています。 かつては自社のゲーム機を買ってもらうために、巨額の投資をしてでも「独占タイトル」を作る必要がありました。 しかし、現在PlayStation 5はすでに世界中に十分普及しています。 次世代機の噂も飛び交う中、もはや無理に独占タイトルに巨費を投じる理由が薄れてきているのかもしれません。


レベルファイブのAI炎上騒動。効率化と見せ方のジレンマ
さて、二つ目のニュースです。今度は「レベルファイブ」というゲーム会社のお話です。

先日行われた同社の新作発表会で、『イナズマイレブン』や『レイトン教授』といった人気IP(知的財産=キャラクターや世界観)のプロモーション映像に、「生成AIが使われているのではないか」と批判が殺到し、炎上してしまいました。

これを受け、日野社長は「シナリオやキャラクターデザインなどの中核は人間の手で作っている」と釈明。 AIはあくまで、人間が作ったクリエイティブをデジタル化する際の効率化に使っており、これによって「5年かかる開発期間が2年に短縮できる」と説明しました。

皆さんは、ゲーム開発にAIを使うことについてどう感じますか?

実は現在、ゲーム業界の99%は何らかの形でAIを活用しています。 モック(試作品)作りやアイデア出し、プログラミングの補助など、AIなしでは現代のゲーム開発は成り立たないほどです。 とくに、開発の長期化が課題となっているレベルファイブにとって、AIによる期間短縮は喉から手が出るほど欲しい「魔法の杖」でしょう。

しかし、今回は「見せ方」が良くありませんでした。

プロモーション映像は、プレイヤーに「面白そう!買いたい!」とワクワクしてもらうためのものです。 そこで「AIが作った安っぽい映像だ」「手抜きをしているんじゃないか」と不安を抱かせてしまっては本末転倒です。

高級レストランの宣伝で、「この料理は最新の全自動調理ロボットで作りました!」と前面にアピールされても、なんだか味気なく感じてしまいますよね。それと同じです。

社長の言う「効率化のためのAI利用」は業界の常識であり、間違っていません。 しかし、それを細かくユーザーに説明させられている時点で、プロモーションとしては失敗と言わざるを得ません。 悲しいことですが、今のゲーム業界は「いかにAIを使っているとバレないように、うまくAIを活用するか」という見えない選手権のようになっています。

巨大化するゲーム開発の行き着く先
ここまで2つのニュースを見てきましたが、根底にあるのは「肥大化し続けるゲーム開発」という共通の課題です。

近年、開発規模があまりに大きくなりすぎた結果、途中で予算が尽きてプロジェクトが打ち切られるケースが国内外で急増しています。 昔のように「スタッフが会社に寝泊まりして徹夜で完成させる」といった根性論も、働き方改革が進む現代では通用しません。

だからこそ、開発費の膨張に耐えられなくなったソニーは小島プロとの関係を見直し、レベルファイブは開発期間を圧縮するためにAIの導入を急いだのです。

ちなみに私事ですが、最近プレイしている『ファイアーエムブレム』も凄まじいボリュームで、すでに何十時間も遊んでいるのに全く終わる気配がありません。 遊ぶ側としては嬉しい悲鳴ですが、「これを作るのに一体どれだけの時間と労力がかかっているんだろう」と、思わず遠い目をしてしまいます。

ゲームのクオリティが高くなるのは素晴らしいことですが、それを作る企業側は今、大きな転換期を迎えています。皆さんは、これからのゲーム業界がどうなっていくと期待しますか?