「大作に7年かかる時代、ゲームクリエイターはどう育つのか?」と「サイゲームスの小規模回帰とクレジット削除劇――ゲーム開発の歪みとリアル」


大作ゲームが1本作られるのに、いまや5年から7年かかる時代です。ひとりのクリエイターが人生の中で関われるゲームの数は、かつてないほど少なくなってしまいました。

そんな業界の構造的な歪みが、今回の「岡本吉起&ナカイドラジオ」の配信でも生々しい言葉で浮かび上がってきました。業界のベテランである岡本吉起さんと、ゲーム系動画クリエイターのナカイドさんが語り合ったのは、単なるゴシップやニュースの表面ではありません。巨大化しすぎたゲーム産業の裏で起きている、作り手の苦悩や生々しい摩擦のリアルです。

配信で交わされた主なテーマを、業界の背景も交えながら読み解いていきます。


1. なぜ大手は「小さなゲーム」を作り始めたのか?

配信の前半で話題に上がったのが、Cygamesの新ブランド「Cygames Edge」と、その第1弾タイトル『崩落の国』の発表でした。数時間でクリアできるような、小・中規模のダウンロードタイトルを展開していく試みです。

一見すると「大手がインディー市場に参入してきただけ」に見えるかもしれません。けれど岡本吉起さんの見立ては違いました。これは、「次世代のリーダーを育てるための打席づくり」なのだと。

考えてみてください。新卒で入った会社で、1本の大型タイトルに7年かかり、さらにその後の運営に何年も関わったとします。気づけば、1本のゲームに関わっただけで20代が終わってしまう。しかも、すでに出来上がった巨大プロジェクトの歯車として働くばかりで、「ゼロから1を立ち上げる経験」を一度も積めないまま中堅になってしまうのです。

「下にいるときは文句も言える。でも、いざ自分がディレクターになって『細かいことまで全部自分で決めなきゃいけない』場所に立って初めてわかることがある」

岡本さんはそう語ります。

いきなり数百億円の超大作で新人にボールを投げさせるわけにはいきません。だからこそ、あえて小規模なプロジェクトでキャッチボールをさせ、打席に立たせる。

ただ、岡本さんはこうも釘を刺します。

「これでプレイヤー側にすぐ面白いゲームが届くとは限らない」と。若手の修業の場だからこそ、失敗も多い。かつてカプコンで似た試みをした際も、無数に作った中で本当に大ヒットしたのは『逆転裁判』くらいだったそうです。

育てることと、売れること。その狭間で大手各社が試行錯誤している様子が伝わってきます。


2. 『Fate/EXTRA Record』と、クリエイターの衝突

続いて切り込まれたのは、リメイク作『Fate/EXTRA Record』をめぐる異例の事態でした。

発売延期に加え、販売元(パブリッシャー)がバンダイナムコエンターテインメントからアニプレックスへ変更。さらに開発を率いていた新納一哉氏がスタジオBBを離脱し、あろうことか「スタッフクレジットから自分の名前を削除する」と発表した件です。

クリエイターが自分の代表作になるはずのゲームから名前を消す。これは業界的に見ても、ただ事ではありません。

「よほど揉めたのか、それとも受け入れがたい条件を突きつけられたのか」。

2人の見立ては一致していました。作品への強いこだわりから延期を重ねたいクリエイターと、ビジネスとして納期を守らせたい販売元。どちらの言い分もわかるからこそ、溝が深まると修復不能な大喧嘩に発展してしまいます。

ここで飛び出したのが、岡本さん自身の強烈な昔話でした。若き日のカプコン時代、「売れるかどうかもわからないゲームを作っているくせに」と上司に言われ、激怒して鉛筆を投げつけ眉間に刺してしまったというエピソードです。

笑い話のように語られていましたが、クリエイターが「自分の魂」を削って作っている現場の熱量と危うさは、いつの時代も変わりません。誰も得をしない結末を迎えてしまったこのプロジェクトですが、完成して世に出るゲームそのものはどう仕上がっているのか、複雑な思いを抱かせるトピックでした。


3. ゲームが溢れかえる世界で、私たちは何を選ぶのか

中盤で岡本さんが体調不良により退出したあと、配信はナカイドさんの単独トークへと移ります。そこで語られたのは、配信者としてのリアルな実感と、現代のゲーム環境に対する問いかけでした。

いま、世の中にはゲームが多すぎます。
基本プレイ無料で、1本で何百時間も遊べてしまうタイトルが無数にある。ユーザーからすれば「遊ぶゲームがなくて退屈する」ことはまずありません。

しかし、その裏返しとして、個人やインディーが丹精込めて作った小品が誰の目にも触れず埋もれていく現実があります。

Steamにゲームを出しても、プレイしてくれる人は一握り。ましてや長文のレビューを書いて広めてくれる人など、ごくわずかです。

「面白いゲームと、それを好きになってくれる人をどうやってマッチングさせるか」。

ナカイドさんが漏らしたこの言葉は、現代のゲーム文化が抱える一番の課題かもしれません。

動画の最後では、自身のチャンネル運営についても触れられていました。普段の「ゲーム業界の闇や問題点を切り込む動画(ビジネスの闇)」だけでなく、自分が本当に好きだった懐かしいゲームや、純粋に面白いと思ったカルチャーを語り合える「光のサブチャンネル」を作っていきたい、と。
ゲームを作る側も、売る側も、そして届けるインフルエンサーも、みんなそれぞれの場所で「正解のない問い」と戦っています。

あなたは最近、心から熱中できるゲームに出会えていますか? 溢れる情報の波の中で、自分だけの「運命の1本」を見つけるのは、昔より少しだけ難しくなっているのかもしれません。