華やかな衣装に身を包んだキャストと、作り込まれた非日常の空間――。街を歩けばあちこちで見かけるようになった「コンカフェ(コンセプトカフェ)」ですが、その裏側のビジネス事情はどうなっているのでしょうか?
「かわいい女の子とおしゃべりできる飲食店」というイメージだけで見ると、実態を見誤るかもしれません。実はここ、飲食ビジネスというよりは、綿密に計算された極めて泥臭い「数字とファイナンスの世界」なのです。
九州を中心に22店舗を展開するグループオーナー・筒井さんの生々しい告白から、そのリアルを紐解いてみましょう。
#月商500万円、利益率は20〜30%という「異常値」
まず気になるのは、率直に言って「いくら儲かるのか」ですよね。
一般的なカフェや居酒屋などの飲食店を思い浮かべてみてください。食材費や光熱費、人件費を引いたあとに残る営業利益率は、せいぜい10%前後、下手をすれば5%を切ることも珍しくありません。
ところが、動画で明かされたコンカフェの適正利益率は20〜30%。地方都市である鹿児島にある店舗「キャンディメイド」の月商が500万〜600万円だといいますから、毎月100万〜180万円近くの利益がコンスタントに残る計算です。
普通の飲食店経営者から見れば「利益を取りすぎでは?」と目を疑うような数字でしょう。なぜ、これほどの高収益が成り立つのでしょうか?
理由はシンプルです。売っているものが「ドリンクや食事」ではなく、「エンタメ体験」そのものだからです。特にキャストの誕生日や周年イベントといったお祭り時には、シャンパンなどの高単価商品が動き、売上が一気に跳ね上がります。
#「あえてオタク層を狙わない」逆張りの空間づくり
では、どんな人がこの空間にお金を払っているのでしょう?
コンカフェと聞くと、アニメやアイドルが好きな、いわゆる「オタク層」の常連客で賑わっている光景を想像しませんか? しかし、このグループの戦略は真逆を行っています。
彼らが設定している裏のターゲット(ペルソナ)は、繁華街を歩いている「ちょっとイキがった、クラッチバッグを持ったヤンキー気質の3人組」なのだそうです。
想像してみてください。全身真っピンクのメルヘンな店内に、強面の男性グループが足を踏み入れる瞬間を。最初は照れくさそうにしていた彼らが、圧倒的な世界観と巧みな接客に巻き込まれ、最後は笑顔で「なんだかんだ楽しかったな!」と帰っていく――。このギャップによるエンタメ体験こそが、リピートを生む強力な武器になっています。
さらに重要なのが、「全店舗で風俗営業許可(風営法1号)を取る」という徹底ぶりです。
「風営法」と聞くと少し身構えてしまいますよね。日常の言葉で言えば、「カウンター越しにお客さんの隣に座ったり、積極的にお酒を勧めたりして場を盛り上げる(=接待する)ための法的な許可」のことです。グレーゾーンな営業でお茶を濁すのではなく、正々堂々と許可を取り、合法的に全力でお客さんを楽しませる。この覚悟が、高い客単価と満足度を支えています。
#なぜオーナーは「未経験からの独立」を絶対に勧めないのか?
「利益率30%で、月商600万。それなら自分もお店を出してみたい!」
そう思った方もいるかもしれません。
でも、オーナーの筒井さんは「これから始める人には、よっぽどの理由がない限り絶対にお勧めしない」と釘を刺します。
いったいなぜでしょうか? 繁盛店を作れるノウハウがあるのに、なぜ止めるのか。
答えは、華やかな現場からは見えにくい「ファイナンス(資金調達)の分厚い壁」にあります。
ビジネスを立ち上げたり拡大したりするとき、通常は銀行から事業資金を融資してもらいます。しかし、風営法が絡む「水商売・夜職」の業態に対しては、日本の金融機関は原則として融資の蛇口を閉ざします。AIやネットの知識では「借り入れ可能」と出てくることがあっても、現場の現実は極めて厳しいのです。
銀行がお金を貸してくれないということは、何を意味するでしょうか?
すべて自己資金でまかなわなければならない(手元資金が尽きれば即ゲームオーバー)
事業の売却や引き継ぎ(イグジットや事業承継)ができない
ここが見落とされがちな罠です。もし自分の店が大成功して、グループ会社を誰かに数億円で買い取ってもらおうとしても、買い手側も銀行からお金を借りられません。個人が数億円の現金をポンとポケットマネーで用意できない限り、お店を売ることも、次の世代にバトンタッチすることもできないのです。
つまり、「参入するのは簡単そうに見えて、事業を広げることも、綺麗に畳んで抜けることも極めて難しいビジネス構造」になっているわけです。
まずは「他人の褌(ふんどし)」で経営を学べ
動画の終盤、オーナーのもとへ面接にやってきた元サラリーマン男性のエピソードが語られます。
彼は「コンカフェは儲かる」と確信し、脱サラして何社もの銀行に事業計画書を持ち込みました。しかし、審査に落ち続け、なぜ断られるのか理由すら教えてもらえなかったといいます。資金調達という最初の関門で、完全に立ち往生してしまったのです。
結局、その男性は筒井さんのグループに入社し、まずは1店舗の代表として経験を積む道を選びました。
この選択は、非常に理にかなっています。
いきなり身銭を切って無謀な借金や自己破産のリスクを背負う必要はありません。利益連動のインセンティブ(成果報酬)がある既存の組織で店長や代表を務めれば、リスクを抑えながら「ミニ経営」を体験できます。売上をどう立て、キャストをどう束ね、経費をどうコントロールするか――その実践的な皮膚感覚を身につけてからでも、自分の城を持つのは遅くないはずです。
「好き」や「流行り」だけで飛び込むと火傷をする。
けれど、数字の裏付けとビジネスモデルの限界を冷静に見据えられる人にとっては、今なお強烈な爆発力を秘めた世界である――。きらびやかなネオンの奥にある、経営のシビアな手触りを教えてくれる内容でした。