──決算の数字を拝見すると、今期はトップラインも利益ベースもそんなに伸びていない状況があります。VTuber市場はトップが独占していて新規参入が難しい今、どう広がっていく展望がありますか。一方でAITberのような新しい存在も出ていて、市場への影響をどう見ているか教えて下さい。


谷郷氏 VTuberの業界をどこが牽引していくのかという話について、もちろんわれわれがその1社であるという認識をしていますが、現実問題としてタレントさんがデビューした翌年の方が利益を出しやすいという構造があります。そして昨年度も、今年度もタレントさんをデビューさせていない状況がありまして、われわれとしては騎座をためこむようなタイミングになっています。

ただ、われわれ以外にもこの市場を牽引している会社さんも存在していると認識しています。具体的には、例えば韓国の「PLAVE」(プレイブ)を運営しているVLASTさんです。日本においてはVTuberというのは主に配信者型が主流だと思うのですが、韓国ではBrave groupさんが買収された「StelLive」などの配信者型もいたうえで、PLAVEさんはアーティスト型のVTuberで、つまりタレント一人一人はチャンネルを持たずに、PLAVEというチャンネルだけを運用して音楽をメインに活動されています。

もう売上が確か90億ぐらい出ているという認識で、かなり日本でも攻勢をかけられている。韓国側では、類似するようなVTuberは男性というよりかは女性側でかなり出てきている認識です。

VTuberは、基本的には世の中に埋もれたタレントをどうやって利活用していくかというビジネスで、日本だと声優になりたくてもなれなかったり、憧れている配信者の方だったりが、かなり人材プールとしていらっしゃる。韓国にはK-POPのアイドルになりたくてなれないような狭き門がある。そういう人たちがVTuberとしてデビューしていくのが今、起こっているんだと思います。当面、この日韓というところが、かなり市場を牽引していくのではと考えています。

AIVTuberという市場に関しては、今私の認識では、AIキャラクターチャットサービスというものが、かなり立ち上がってきている認識です。やはりAIVTuberというのは、Neuro-samaのように高度な技術を背景として人気になった存在もいますが、一人のAIVTuberが注目を集めても、複数のAIVTuberが人気になれるのかというと、ちょっとわからない側面があるビジネスです。

一方でAIキャラクターチャットという部分は、App Storeなどでもたくさん見かけるようになっていると思います。つまりキャラクター性によって受け答えを変えることがすごくしやすいので、そういった領域でビジネスが伸びていっている認識です。


──生成AIの普及がエンタメ業界全体において議論になっておりますが、その脅威についてどう考えますか? また自社サービスについて生成AIの活用を考えていますか?

谷郷氏 生成AIが脅威になるのかというと、そういう認識は現状はあまりしていないです。AIVTuberと生成AIはまた別物ですし、われわれは映像制作屋ではなく、やはりタレントさんを応援するファンの方々がいて成り立つようなビジネスです。

生成AIでつくられた映像を楽しむような方が増えてくれば、その映像という領域においては、……何て言うんでしょう、多少のカニバリゼーションが発生する可能性もゼロとは言えないと思いますが、基本的にはそれもクリエイターになりたくてなれなかった方たちが、AIにうまく指示を出すだけで映像を作れるようになる流れになるのかなと思っています。ある意味、クリエイターの裾野が広がっていくということではあるのかなと。

ただ、自社で活用するのは非常に難しいのかなと認識していて、やはり現状はAIをトレーニングするためにさまざまな著作権の(グレーな)データを活用されているのが現状だと思います。自社内のデータだけでトレーニングできるような、今ですと「博衣こより」のAI版をつくることもやっていますが、それ以外の領域ではなかなか取り組んでいくのは難しい面があるのではと。

もちろん、そうではない会議の議事録とかでフル活用していくのは当然会社としてもうかがっている部分ではありますが、著作権の問題がなかなかクリアされない以上は、生成AIを最終成果物に使っていくのは現状ではなかなか難しいところがあると思います。