「Life is Artificial」のエピソードへようこそ。この番組では、最先端の技術革新と、未来がどのような姿を見せるかを探求します。
本日は、テクノロジー業界の2大巨頭、ソフトバンクとNVIDIAの間にある興味深い歴史について掘り下げていきます。
このストーリーは、戦略的投資、大胆な野望、そしておそらく多少の後悔をも含むものです。
ソフトバンクのNVIDIAへの初期投資がAI革命の新たな章を開いた経緯、そしてその後に両社がそれぞれどのようにテクノロジー界で波を起こし続けたかを見ていきましょう。
2017年に遡ります
ソフトバンクは、その創業者でありビジョナリーである孫正義氏の指揮の下、大きな動きを見せました。それは、NVIDIAの株式を4.9%購入するというものでした。当時、NVIDIAはGPU技術の革新で注目を集めている企業でした。ソフトバンクのビジョンファンドは、画期的なテクノロジー企業を支援するという使命を掲げており、NVIDIAはその理想に完全に合致していました。
NVIDIAは、高性能グラフィックス処理ユニット(GPU)で知られています。当初はゲーム業界を変革するために使われていましたが、次第に人工知能、自動運転車、データセンターなど、さまざまな分野で重要な役割を果たすようになりました。ソフトバンクの投資は、財務的に戦略的であるだけでなく、象徴的な意味合いも持っていました。AIが未来において重要な役割を果たし、NVIDIAのGPUがその中心になるというソフトバンクの見解を明確に示すものだったのです。
約2年間、この関係は順調に進み、NVIDIAの株価は着実に上昇していました。テクノロジー界では、同社がAI革命において中心的な役割を果たす企業であることがますます認識されていました。
しかし2019年、驚きの決断が下されました
ソフトバンクは、NVIDIAの株式をすべて売却し、約33億ドルの利益を得て手放しました。なぜこのタイミングで売却を決断したのでしょうか?その理由は複雑です。
1. ポートフォリオのリバランス
ソフトバンクのビジョンファンドは、AIや半導体だけでなく、幅広いテクノロジー企業に投資していました。NVIDIA株を売却することで、新たな事業に投資するための資本を確保しました。
2. 市場の状況
2018年、暗号通貨マイニングブームの終息により需要が減少し、半導体業界全体でボラティリティが見られました。この影響でNVIDIAの成長は一時的に鈍化し、一部の投資家にとっては売却の好機と見られました。
3. 新たな投資機会
ソフトバンクは他の新興技術や企業に多くの投資を行っており、ダイナミックな投資アプローチを取る孫正義氏にとって、この売却は新たな高成長企業への再投資を可能にしました。
しかしその後、NVIDIAの価値は急上昇。生成AIや大規模言語モデルの普及に伴い、同社のGPUの需要は爆発的に増加しました。この展開を受けて、孫氏はNVIDIA株を手放したことは「失敗だった」と公言しました。
2020年、NVIDIAとソフトバンクの道が再び交差
NVIDIAは、ソフトバンク傘下の英国の半導体・ソフトウェア設計企業であるArmを400億ドルで買収するという大胆な計画を発表しました。この取引は、NVIDIAのAI専門知識とArmのCPU技術を組み合わせることで、デバイス全体のイノベーションを加速させることを目指していました。
しかし、世界中の規制当局が独占禁止法の懸念を提起。約2年にわたる精査の末、2022年にこの取引は実現しませんでした。
2023年、両社の新たな協力関係
NVIDIAとソフトバンクは、生成AIや5G、6Gといった高度な通信技術に焦点を当てたコラボレーションを発表しました。NVIDIAの最先端GH200 Grace Hopperスーパーコンピュータチップを日本で展開し、AI駆動型の無線ネットワークを支えるデータセンターを構築するというものです。このプロジェクトは、AIと通信分野でそれぞれリーダーシップを発揮する両社の技術力を示しています。
結論
ソフトバンクとNVIDIAの関係は、戦略的投資や買収の試み、最先端のコラボレーションを通じて、複雑かつ進化し続けています。ソフトバンクにとって、NVIDIAは「逃した魚」であり、AI革命の波に乗る絶好の機会を逃したと言えるでしょう。一方で、NVIDIAにとっては、ソフトバンクが初期のAI成長を支援した重要な投資家であったことは間違いありません。
2024年10月、孫氏は「NVIDIAの株価はまだ過小評価されている」と公言し、同社がAI未来を牽引する潜在力を信じ続けています。AIが変革的な力としてますます重要になる中、両社が将来的にさらに緊密に協力する可能性もあるでしょう。
以上、ソフトバンクとNVIDIAにまつわるストーリーでした。
この関係から、テクノロジーの急速な世界では、タイミングとビジョンがいかに重要であるかを学ぶことができます。