【CygamesPictures】ブレイバーン


代表(兼 Cygamesアニメ事業部 事業部長)竹中信広さんと立ち上げた企画です。約5年前に「ロボットモノを作りましょう」という竹中さんの言葉から企画が始まり、内容を具体的に詰めていく際にライターがいた方が進みやすいのではとなり、シリーズ構成の小柳さんが参加されました。実作業的にはここ3年間ですごいペースで完成へと突き進みました。

――今回、特にリアルロボットとスーパーロボットの融合が印象的でした。放送前のティザービジュアルでは、メカはティタノストライド(以下TS)しか公開されておらず、ブレイバーンの存在は隠されていましたよね。

それは私のアイデアで、視聴者の皆さんには登場人物と同じ目線で作品に没入してほしかったからです。 今の世界と地続きなリアルな世界観で、ミリタリー色の強いロボットアニメに急にスーパーロボットが乱入する感覚ですね。例えば『インディペンデンス・デイ』や『宇宙戦争』、あと『バトルシップ』とかって宇宙人に対して人類が抵抗する物語だと思っているんですが、私はいつも「ここでスーパーロボットが来い!」と映画を見ながら思ってたわけですよ(笑)。もう世界観をぶち破るヒーローってワクワクしますよね。ただ、あくまでブレイバーンもリアルロボット世界から地続きの世界の住人として生きていることを意識して作りました。軍事考証については小柳さんがすごくお詳しい方なので、F-35C、A-10Uなど現代兵器も劇中でしっかり描くことができて、ミサイルひとつに至るまでCGで作ってもらっているんですよ。このリアルな舞台を準備するのが大変でした。ただ、そのおかげでブレイバーンの異物感、エネミーが現れる部分が際立って、面白いシーンとなりました。

――タイトルはどのように決まったのでしょうか?

最初は「ブレイブロボット」とか「大張ロボット」みたいな企画タイトルでした(笑)。「勇気爆発」は竹中さんのアイデアなんです。ある意味、違和感もあって、すごくよかったですね。最初は「えっ?」とも思ったんですよ(笑)。私の中では「BURN OF THE ABSOLUTE BRAVE」のようなハリウッド映画みたいなタイトルを考えていて、そこにいきなりスーパーロボットがドーンと現れるみたいなテイストを想定していました。ただ、「勇気爆発」というタイトルを発表したときは、ティザービジュアルからは全く想像できない単語だったのか物議も起こり、話題になってくれました。竹中さん、さすがですよね。「勇気爆発」は大正解でした。

――ブレイバーンのデザインについてお聞かせください。

ブレイバーンは3DCGで動かすことを想定してデザインしています。また、なるべくパーツの取り外しなしで簡単に変形できる、シルエットが変わるデザインを考えました。

首周りのダクト、ネッククーラーのようなパーツは、実はあの状態でスピーカーなんです。決めポーズ時の「ピキーン」って効果音も自分で出してますから(笑)。エンブレムもブレイバーン本体から展開していて、デザインとしてパーツに組み込まれています。当時の設定画を見ると……もう4年前にデザインしていますね。2020年4月2日、これがブレイバーンの誕生日です(笑)。

――制作当初、大張さんは「ロボは作画で」とのこだわりもあったとお聞きしていますが、CGに対する不安などはあったのでしょうか?

いや、今回は最初から手描きとCGのハイブリッドを考えていました。その割合をどうするかを結構スタッフと話し合って決めましたね。3DCGディレクターの中野祥典さんがすごく優秀な方で、自分が描きたかった画を彼が作ってくれるんです。「こんなの絶対に手描きじゃ描けないじゃん」ってところまで再現してくれて、彼の存在があるからこそ攻めた絵コンテが描けています。

――実際、CGのブレイバーンを見たときは、どう思われましたか?

三面図の設定も描いていたので、その設定に合わせた頭身でちゃんと再現していただきました。ブレイバーンは手の指先も通常のTVアニメのロボとは異なる形状で、センサー系が各部にあります。3DCGだからこそできる精密なデザインですよね。だからこそ劇中でブレイバーンが手を見るシーンなども印象的になったと思います。

3DCGアニメーターの皆さんが作るモーションに関しても、ちゃんと指先まで気を使って作っていただいているところも素晴らしいです。絵が描けるうえで、CGを扱っていることがよくわかりますね。

――ブレイバーンとTSの差別化についてはいかがでしょうか?

それは絵コンテの段階で計算していますね。それこそ1話ではTSの戦闘は戦争映画のようなリアリティで無機質なアクションにしていますが、ブレイバーンは同じ無機質でも生命体で、“魂のあるヒーローロボット”らしいタイミング、パース感で動くことを意識しています。

あとは表情変化。SNSでブレイバーンの口元が話題になっていて、「キモい」なんて声もありましたが、こちらはかわいいつもりで作ってるんですけどね(笑)。猫口“ω”とかニマッとしたやつとか、かわいいですよね? 1話の「乗るんだ」あたりから「キモい」と言われてしまっています……。

――でも印象的なシーンになりましたよね(笑)。

あの登場シーン、本当は敵か味方かわからないイメージだったんですよ。カラーリング的にも、フェイスパーツも謎めいている。でもイサミが搭乗することで、カラーが変わり、フェイスオープンしてハンサムフェイスが現れる。あえて“イケメン”でなく、劇中でも“ハンサム”と言わせてもらっています。ちょっと90年代のテイスト、懐かしい感じですよね。

――ちなみに水中戦でおぼれそうになっていましたが、ブレイバーンは呼吸するんですか?

あそこはちょっとしたギャグです(笑)。小ネタを仕込むことはちょこちょこやっていますね。

――「私の全身の油圧パイプ…」みたいなセリフもありました。

「オイル流れているのか?」っていう(笑)。“燃える血潮”の例えとしてのオイルなので、本当は流れていないですよ。

――5話ではブレイバーンのフィギュア好きが判明しましたね。

男の秘密基地ですね。何でも作れる「超次元3Dプリンター ビルドバーン」が設置されていますが、実はあれも後半の伏線になっています。

――ブレイバーンといえば、声優の鈴村健一さんの存在は大きいですよね。それこそ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のシン・アスカともまったくイメージが違う声ですね。本作はそんな鈴村さんの代表作になることと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

いや鈴村さんには本当に申し訳ないです(笑)。でも、ちゃんとかっこいいですから! すごくかっこいい!

――鈴村さんのブレイバーン役はどのように決まったのでしょうか?

2年前にオーディションを受けてもらいました。多くの方に受けてもらって。それこそ本来は「指名でお願いします」って方にも受けていただいていて。その中で声を聞いた瞬間、鈴村さんとだと確信しました。実際、鈴村さんとは『超重神グラヴィオン』、『超重神グラヴィオンZwei』でもご一緒していて。当時も素晴らしい声優さんでしたが、あの頃の若さとはまた違う、深みと色気があるヒーローボイスがロボットボイスになるとさらに超かっこよかった。オーディションでは技名の他にも、2話でイサミになかなか来てもらえずピンチになったときの「イサミィ~~」ってセリフもお願いしていて、情けなさとかっこよさのバランスが最高でしたね。『超重神グラヴィオン』から約20年の時が経って、また鈴村さんとご一緒できたことは光栄です。

――ブレイバーン以外のキャスティングについてはいかがですか?

イサミ・アオの鈴木崚汰さん、ルイス・スミスの阿座上洋平さんもオーディションですね。まずこのふたりを主軸として、ブレイバーン含めて、周りのキャスティングを決めています。鈴木崚汰さんは、私の友人でもある中澤一登監督作品の『海賊王女』の出演から注目していて。すごくストイックで魅力的な声優さんです。

――阿座上さんは『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のグエル役でも知られる、今注目の声優さんのひとりですよね。

『スーパーロボット大戦DD』でもご一緒してますし、『ガンダムブレイカーバトローグ』にも出演していただいて、すごくいい声優さんです。『水星の魔女』の前からもう目を付けていましたし、宮本侑芽さん、井澤詩織さんもそうですね。井澤さん、ロボット乗ったことないし……と思ってたんですけど(笑)。

――実際、オーディションは大変だったのでは?

当時、コロナ過でスタジオ収録も難しくて、ご自宅なりで録音してもらった声を聞かせてもらいました。各キャラクターに数十人単位で受けてもらっていましたが、実はルルが一番多くて、それこそ70人くらい。すべてじっくり聞かせてもらいましたが、その中で会沢紗弥さんこそ「ルルだ!」ってズバリでしたね。新鮮さもありましたし、思い切りの良さも含めて天才だと思いました。本人にも伝えましたが、オーディションを受けてくれて感謝です。

――スペルビア役の杉田智和さんもオーディションですか?

彼は完全に私からの指名です。特に大切な役だからこそ、杉田さんにお願いしました。ちなみにデスドライヴズの面々は、過去に自分がお仕事をご一緒させていただいてきた方々が担当されますので、お楽しみに。

――1話で戦死してしまうパイロットのリョウマ・アラカイに、木村昴さんがキャスティングされていましたよね?

ここはあえて木村さんにお願いしました。つまり木村さんほどの方が演じているキャラクターが死ぬはずはないのに、死んでしまう。油断できない世界、リアリティの一旦を担ってもらいました。もちろん木村さんには事前に相談したうえで、ネームバリュー込みでの演出になりました。

――本当に豪華キャストですよね。

それこそメインを張れる役者さんたちが、あえてサブでやっていただけるなんてありがたいですね。キャスティング含めて音響制作費は相当な額になっていると思います。聞かないようにしてるんですけど……本当に怖いので(笑)。

――OP主題歌「ババーンと推参!バーンブレイバーン」は中毒的な曲ですよね。

生演奏でもありますし、生コーラスですごく力を入れて、分厚く作ってもらいました。

――曲を聴いたとき、どう思われました?

プロットが上がってきたとき、竹中さんから「率直にどう思います?」と聞かれまして。聴いた瞬間、「これ挿入歌としても使いたい!」と、さらにブレイバーンに歌わせたいと思いました(笑)。そこでスポットに合わせて90秒間、戦闘が始まって“タカタン”で爆発するまでの90秒間を設定して絵コンテを描きました。曲あっての戦闘シーンですね。

これを歌ってもらいたい気持ちもあっての、鈴村さん=ブレイバーンです。応援上映とかがあったら、みんなで歌いながらペンライトを振ってほしいですね。ブレイバーンと一緒に「イサミー!」って叫んでほしい(笑)。

――この曲も、大張さんとしての演出や発注指示はあったのでしょうか?

鈴村さんの歌のキー、どのレンジで歌ってもらうか、ブレイバーンとして歌ってほしいとお願いしました。

――最高の曲に対し、映像としてもオープニングはまさに大張さん監督作品ならではのかっこよさがありますよね。

お気づきの方も多いと思いますが、オープニングにはいろんな伏線が散りばめてあるので、ストーリーが進むと気づいてもらえることもあると思います。これはオンエアが終了したら、ぜひ語りたいです。

――ED主題歌「双炎の肖像」についてはいかがですか?

最初からデュエットは考えていて、私としては「東方神起」のミュージックビデオっぽいイメージにしたかったのですが……まさかあんなコテコテになるとは(笑)。撮影監督の林賢太さんが絵コンテと演出を担当されていますが、想定外の方向性ながら感動しましたね。竹中さんに「エンディング、どんな感じでイメージしています?」と聞いたとき、その場で踊りだして説明してくれたのですが。いったい視聴者に何を見せようとしてるんだろうって(笑)。

――本編含めて、半裸が多いですよね(笑)。

エンディングは最後、PANアップしたとき、宇宙が広がるのは私のアイデアなんですよ。殻を脱ぎ捨て、ひとつになって奇跡を起こすイメージです。

■音響監督

――今回、監督だけでなく、音響監督も担当された経緯についてお聞かせください。

今までCMアニメーションやゲーム、ショートアニメーションでは音響監督をしたことがありますが、テレビシリーズとしては初めての経験です。今回はキャスティング、劇伴の曲調にいたるまで確固たるイメージがあったので、映像だけでなく音響にもこだわりたかったから音響監督もさせていただいています。普通は大変なのでやらないのですが、今回は監督生命を掛けた作品ですからね。

――劇伴(BGM)についてはどのような作業をされたのでしょうか?

今回はシナリオが上がった段階で、もう「ここから流れる曲を」という風に具体的に指定して作ってもらいました。今回、音楽は渡邊崇さんにお願いしています。さまざまな映画やドラマ、舞台などで活躍されている作曲家さんですが、ロボットアニメは初めて担当されるとのことで、どんな曲にしてくれるのかすごく楽しみでした。
 今回自分としても、演出に合わせて曲を作ったり、逆に曲に合わせた演出もできるので、そこは監督と音響監督のどちらも手掛けている強みだと思いました。ただ、映像と音楽の演出はそれこそ『超獣機神ダンクーガ』の頃からずっと意識してやってきたことでもあるので、そこは自信もありました。

――音響監督してのこだわりについてお聞かせください。

ちゃんとキャラクターごとにテーマを張ることですね。「このシチュエーションだからこの曲」とか濫用したくないんですよね。気に入った曲があっても、「戦闘はコレ!」みたいに固定しないように、いろんなバリエーションを考えていきました。同じ曲を使う場合でも、例えば1話でイサミとブレイバーンが出会うシーンで流れる曲、それを2話でスミスとブレイバーンのシーンでも使って、「生理的に無理」のセリフでバツンと切ってしまったり(笑)。

劇中、1回しか使わないけど、大切にしている曲もあります。楽曲を印象的に使うことも音響監督の仕事だと思っています。

――実際、どれくらいの曲数を使っているのでしょうか?

約50曲以上を発注し、劇中ですべて使いました。『DETONATORオーガン』では平沢進教授の事務所までお伺いして、いくつか作曲をお願いしたこともあったのですが、今回これだけの曲を作曲家さんに発注したのは初めてでした。実際これだけの数を作ってもらうと、劇中で使わなかったり、余っちゃうこともあるんですが、今回すべての曲を劇中で使用したことは誇りに思っています。

――サウンドトラックの発売予定はあるんですか?

まだ決まっていないのですが、ぜひリリースしてほしいですね。

――音響監督の仕事はいかがでしたか?

すごく面白かったですよ。ハマっちゃいました。またやりたいですね。実は今、音響監督としてのオファーもあって。まだ、返事はできていないですけど、評価されたことは嬉しいですね。

■デビュー40周年

――今年は大張さんのデビュー40周年ですよね。

よくここまで最前線で仕事を続けさせていただいているなと感慨深いですね。いつも「最新作が代表作」とは言っていますが、今回は40周年記念作品ですし、『勇気爆発バーンブレイバーン』は監督生命をかけた勝負作品として作ってきました。もちろん他の作品も大切にしていますが、今回は絶対に負けられない。思い入れは強いですね。今まで多くの作品で“これまで観たことのないロボットアニメ”を目指してきましたが、やはり納得できていない部分もあったので、今回はそのリベンジでもあります。

――まさに大張作品の集大成となるロボットアニメですね。

自分がこれまでやりたかったこと、観たかったことを徹底しています。それこそハリウッド映画的なギャグ、戦争映画のこじゃれたセリフを小柳さんにもお願いしていて。バックグラウンドとなる世界観をしっかり構築しておいて、それをぶち壊す。ただ、それが視聴者に受け入れてもらえるかどうか。本当にオンエアの数分前までは吐きそうでした。

――プレッシャーは相当あったようですね。

ダメだったら引退するくらいの覚悟でした。プロレスラーだったら、東京ドームのメインイベントを迎えるチャンピオンの気持ちに近かったかもしれません。もちろん自信はありましたし、面白いと思って作っていますが、外したらどうしようと。本当に怖かったですよ。それが、いまみなさんに観ていただいて。やはり全国放送していただいたTBSさんのおかげだと思います。地上波なのは大きいですよ。本当に各方面に大感謝でございます。オンエア後の収録で、キャスト陣とお会いしたら、みんな笑顔でしたからね(笑)。

――SNSでも話題ですよね。

それこそ数秒、数十秒単位で誰かがブレイバーンについて発言してくれるんですよ。特にファンアートが嬉しくて。海外からのリアクションもすごく大きいです。皆さんのなかにすでにブレイバーンの存在があると思うと、本当に監督冥利につきますね。

――力を入れて作った話や今後の見どころについてもぜひお聞かせください。

5話はぜひ観てもらいたいですね。ボクシングシーンなどは2Dで頑張った回です。

そして今後は、ある程度主要キャラクターもそろってきたタイミングで、非常に切なくも燃える展開があります。ブレイバーン、そしてルルの正体など、いろんな伏線も回収されていきます。スミスの過去も泣ける展開で、なぜヒーローに憧れているかなどの理由も語られます。ぜひ毎週楽しみにしてもらいたいです。

――本作のキャッチコピーは「君たちは本当の勇気に出逢う」でした。インタビューの最後にお聞きします、大張さんにとって勇気とは?

一歩を踏み出すことかな。アントニオ猪木さんではないですが、やはり一歩踏み出すことによって道になる。自らを進化させる一歩でもありますし、何かを突き動かす一歩になります。私自身現状に満足しないで、さらに一歩を踏み出したいですね。イサミも一歩踏み出したからこそヒーローになれた。各キャラクター、この「勇気」をテーマに描いています。私自身もこの作品で新たな可能性が見えてきました。この作品を観てくださっている皆さんに感謝です。

――ありがとうございました。