「すばらしい会社」を作るために重視すること

僕は会社経営というか、すばらしい会社を作ろうと思ってやってきたので、一番重要なのは一貫性だと思っています。

2002年の合宿の時に、一貫性が取れた話がスイスイ決まっていったんです。中長期で経営する。そのために中長期で働いてくれる社員を大事にする。社員を大事にしているから、大型の買収をして、突然外からたくさん上司がくるといったことはしないし、大きなヘッドハンティングもしない。

人も事業も自分たちで育てる。農耕民族みたいに新卒で採ってイチから人も育てるし、事業もゼロから自分たちのアイデアを形にしていく。このように、いろんなものが一貫性を取れたんですよね。


ちょっと話が変わりますが、権限委譲みたいなものは、我々もずっと繰り返しているんですけど、「組織とは集中と分散を繰り返すものだ」とは最初から頭にありました。

ホールディングス化みたいにして分散させれば、個別の事業の目標がはっきりして採算もはっきりしていくんだけど、それをやりすぎると今度は縦割りになって、無駄が増えたり、会社全体でのシナジーが弱くなっていく。

そうするとまた本社に集約するんだけど、また同じことが起きる。その繰り返しなので、その中で会社を大きくする考え方をしているという感じです。

体感値で無駄がすごく増えて、縦割りが増えてきたなと感じたらそうします。それぞれの個別採算が見えづらくなってきて、みんながお互いに依存し合っていると思ったら分裂させたり。それは感覚値で変えています。

それを可変なものだとしておかないと、1回「ホールディングスです」とすると戻すのも大変なので、サイバーエージェントはホールディングス化をさせていないんです。実際の会社はホールディングみたいになっているんですけどね。

それはすごいジェネレーションギャップを感じますね。昔、すごくメディアに出まくっていた時期があったので。とにかく会社を始めた頃は出た人が注目されて、雑誌にも掲載されて、人材も採用しやすいし、お客さんからも声がかかるし、投資家からも来るし。当時は堀江(貴文)さんの次ぐらいに出まくっていましたよ。

それも活用して、さっきおっしゃったように会社の宣伝、採用、投資家へのアピールも全部やっていたんですけど、それ以外に、会社が始まってすぐ、ホームページに今のブログのようなベンチャー企業日記を書き始めたんですよね。

社員も見るし、外に向けて発信するのでかなりフェアに書かないといけない。それをずっとやってきて、途中からブログに変わって、今はSNSの時代になった。やはり文章を書く能力はすごく大事だと思います。

昔の社長は朝礼で声を張り上げてみんなに方針を説明していたけれども、日記に書けば何とかなるので。今は、YouTubeも出てきたので、書けなくてもしゃべれればいい時代にもなっている。

メディアを活用して意思統一するのは経営者の重要な役割です。方針が変わったら、なぜ変わったのかの背景をタイムリーに適切に発信できるものがある時代なので、当然活用した方がいいですね。

ちなみにメディアに出まくっていた頃からそうですけど、出ない方がいいという社長もいるんですよ。これは確かに業態によってはあったり、何か出たことで叩かれた時に会社に迷惑がかかるだろうという思いはあるんですけど。

それでも僕は出た方がいいなと思う派です。後ろめたいことがなければですけど。

少なくとも自分たちが何者で何を目指しているのか、理解してもらわないといけない段階では、社長が取り上げられる価値がある人であれば出た方がいい。堀江さんは、途中からそれに気づいてめちゃくちゃやっていました。

確実に終わりが来るのは22世紀になった時。それは「変えてよ」という感じではあるんですけど。もともと「自分がこうなりたい」「この事業をやりたい」というよりは、パブリックカンパニーを作るつもりでした。だから上場企業歴も、もう23年やっていますけど、何のストレスもないですよ。

パブリックカンパニーを本当にやるには、創業者に依存しているのはおかしいので、ちゃんと引き継げる状態を作ろうと、今すごい一生懸命やっています。引き継いだら、あとは見守っていこうと思っています。

さっき25年増収のグラフを出してドヤってしまいましたけど、やはり自分だけあれを思い描いてやっても、理解してもらえない。

『起業家』という本で、「孤独、憂鬱、怒り、それを3つ足してもはるかに上回る希望」という言葉を、THA BLUE HERBというアーティストの言葉を使って描いたんですけど。孤独だし、腹が立つこともあるし、憂鬱なんだけど、自分だけが信じてやりきるしかないという。そのままがんばってください。