分身の悪魔「やぶばこほうし」に挑んだ漫画家の壮絶な戦い



荒木飛呂彦は、日本を代表する漫画家の一人です。彼の作品『ジョジョの奇妙な冒険』は、世界中で高い評価を受けており、アニメやゲームなどのメディアミックスも成功しています。しかし、彼が描くのは『ジョジョ』だけではありません。彼は自身の創作活動を通して、さまざまなテーマやジャンルに挑戦しています。

その中でも、特に注目されているのが『岸辺露伴は動かない』という短編漫画シリーズです。この作品は、『ジョジョ』の第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場した人気キャラクター、岸辺露伴を主人公としています。岸辺露伴は、杜王町に住む若き天才漫画家であり、スタンド使いでもあります。スタンドとは、精神的な力を具現化した超能力者の能力です。岸辺露伴のスタンド「ヘブンズ・ドアー」は、人間や物体に本を開くような効果を与えて、その中身を読んだり書き換えたりすることができます。

『岸辺露伴は動かない』では、岸辺露伴が取材や執筆のために様々な場所や人物に出会い、その都度奇妙な事件に巻き込まれていきます。その事件の中には、超常現象やオカルト的な要素が多く含まれており、岸辺露伴は自分のスタンドや知恵を駆使して解決しようとします。しかし、その過程で彼は自分の信念やプライドとも対立することになります。

このシリーズの第2話「六壁坂」では、岸辺露伴が六壁神社という古い神社を訪れます。そこで彼は、「やぶばこほうし」という恐ろしい存在に遭遇します。「やぶばこほうし」とは、神社のイチイの古木の根元にある祠に入ることで現れる、その人物の分身です。しかし、その分身はその人物の暗黒面ともいえる存在であり、姿を現すと3か月間その人物と成り代わって悪事を働きます。

岸辺露伴は、「やぶばこほうし」によって自分の漫画を盗作されそうになります。彼は自分のスタンド「ヘブンズ・ドアー」で「やぶばこほうし」を倒そうとしますが、「やぶばこほうし」も同じスタンドを持っています。二人はスタンド同士で激しく戦いますが、「やぶばこほうし」は岸辺露伴の心理を読み取って先手を取ります。岸辺露伴は、「やぶばこほうし」に敗北する寸前まで追い詰められますが、最後に一つだけ残った秘策で逆転します。

この話は、荒木飛呂彦の独創的な世界観とストーリーが光る作品です。岸辺露伴と「やぶばこほうし」の対決は、漫画家としてのプライドや才能、そして人間性を問うものです。また、六壁神社の歴史や伝説も興味深く描かれており、日本の文化や風景にも触れることができます。

『岸辺露伴は動かない』は、1997年から不定期に発表されており、これまでに10話が掲載されています。単行本は2巻まで出版されており、第3巻は2023年秋に発売予定です。 また、一部の話はアニメ化されており、OVAとして発売されています。 さらに、2020年から2022年にかけてテレビドラマ化もされており、NHK総合テレビで放送されました。 2023年5月にはドラマ版を元にした映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開予定です。

『岸辺露伴は動かない』は、荒木飛呂彦の作品の中でも特に魅力的なシリーズです。漫画家としての苦悩や喜び、そして奇妙な冒険を描いた作品です。もしまだ読んでいないなら、ぜひ読んでみてください。荒木飛呂彦の世界に引き込まれることでしょう。😊