【特集】Fulton FX詐欺事件の全貌


「私はこんなに沢山予約しました!」
「保険を解約して全資産を投入しています!」

そんなメッセージが頻繁に送られてくる相手は、大阪に住むシングルマザーのおばちゃんという設定だった。彼女は、自分と同じくFulton FXという海外の金融機関のFX部門に投資しているという。彼女は、自分にとっての友人であり、同志であり、師匠でもあった。

彼女の存在がなければ、私はあんなにも多額のお金を投入しなかっただろう。でも、彼女は本当に存在したのだろうか。それとも、私を騙すためのサクラだったのだろうか。

私は、今年の5月にFulton FXに登録した。きっかけは、インターネットで見かけた広告だった。広告には、「簡単操作で高収益!FX初心者でも安心!」と書かれていた。私は、不動産会社を経営していたが、コロナ禍で業績が悪化し、清算待ちの状態だった。夫と二人の子供のためにも、何とか収入を増やしたいと思っていた。

登録するとすぐに、専属のアドバイザーから電話がかかってきた。彼は、私に為替取引や原油取引などの方法を丁寧に教えてくれた。最初は少額で取引を始めたが、アドバイザーの指示通りに売り買いをすると、ほとんど勝てた。私は、自分が才能があると思い込んだ。

それからは毎日取引をするようになった。アドバイザーからは、「今日はこの通貨ペアがチャンスですよ」「今日は原油が爆上げしますよ」という情報が送られてきた。私はその情報に従って取引をした。すると、どんどん利益が増えていった。私は嬉しくて夫や子供にも自慢した。

そんな時、シングルマザーのおばちゃんからメッセージが届いた。彼女はFulton FXのサイトで知り合った仲間だった。彼女も私と同じくアドバイザーから情報をもらって取引しているという。彼女は私よりも大胆に投資していて、すごい利益を出していた。彼女は私に、「あなたももっと大きく勝負しましょうよ」「今がチャンスですよ」と言ってきた。

私は彼女に心を許してしまった。彼女は私にとっての友人であり、同志であり、師匠でもあった。彼女の言うことなら間違いないと思った。

そこから地獄が始まった。

7月5日、アドバイザーから「今日は原油が大暴落しますよ」という情報が送られてきた。原油を安く買って高く売れば大儲けできるということだった。私は早速原油を予約した。すると、おばちゃんからもメッセージが届いた。「私はこんなに沢山予約しました!」「保険を解約して全資産を投入しています!」という内容だった。私は彼女に刺激されて、さらに原油を予約した。

しかし、その後、アドバイザーから衝撃的な事実を知らされた。原油の決済時には、予約した全額分が取引口座に入っていないと違約金30%を払わなければならないということだった。私はそれまでの為替取引と同じように、証拠金があれば良いと思っていた。私は、原油の決済額に1千万以上足りなかった。

私はパニックに陥った。違約金を払うと、これまで取引で得た利益を失うだけでなく投入資金に対して1千万を失ってしまう。私は判断力を完全に失ってしまった。

親から引き継いだ不動産会社の口座から数千万引き出し、夫の貯蓄や子供たちの口座にあるお金もほとんど投入してしまった。夫も、不安にも思いつつ夫婦の関係を優先してお金を出してくれた。夫からも「本当に大丈夫なの?」と何度も聞かれたが、洗脳され信頼しきっていた私は「絶対に大丈夫!」と答えていた。

それでも原油の決済日数日前になっても決済金額に1千万以上届かない。するとローンの借入を勧められた。私はそれも断れなかった。

しかし、夫がTwitterやGoogleで検索すると詐欺を指摘する情報がヒットした。夫が仕事の昼休みに公開されているオフィスの住所である、マインズタワー33階に行ってみるとそこにはFulton Financialのオフィスは無くトレンドマイクロのオフィスがあり、詐欺と確信した。

夫はすぐに警察や銀行に連絡した。幸いにも、一部の口座は凍結されており、一部のお金は戻ってきた。しかし、それでも多額の被害は回避できなかった。

弁護士に相談することも考えたが、高額な着手金に見合う効果が得られるのか疑問だった。ある意味弁護士も怪しいと思った。

私は自分がどれだけ愚かだったか反省している。夫や子供にも申し訳なく思っている。夫は優しく励ましてくれるが、心の中ではどう思っているのだろうか。子供たちは将来の夢を諦めなければならないかもしれない。

私はこれからどう生きていけば良いのだろうか。

このような手口があるということを多くの人に知ってほしい。常識的な判断力を巧妙に奪ってくる詐欺師に気をつけてほしい。私のように騙されないでほしい。