『キヴォトスのシンボル、サンクトゥムタワーに隠された真実とは?~先生と一緒に見学会に参加したら、驚きの展開が待っていた~』


連邦捜査部「シャーレ」のオフィスは、キヴォトスという学園都市の中心にある高層ビルの最上階に位置していた。窓からは、青空と白い雲が広がり、下には色とりどりの建物や人々が見えた。空気は清涼で爽やかだった。

「先生~、今日は何するんですか~?」と、小鳥遊ホシノが先生のデスクに寄りかかりながら聞いた。彼女はアビドス高等学校所属の対策委員会の委員長で、先生とはシャーレの顧問として様々な事件に関わってきた仲だった。彼女は長い黒髪を後ろで束ねており、制服の上に白いカーディガンを羽織っていた。顔立ちは整っており、目は大きくて澄んでいた。しかし、その目には時折影が差すこともあった。

「今日は特に何もないよ。だから、ゆっくりしようかな」と先生は笑って答えた。先生はシャーレの顧問として、連邦捜査部から派遣されてきた教師だった。一人称は「私」で、口調は中性的で砕けたものだった。先生は生徒たちのことを何よりも大切にし、どんな問題にも真摯に対応しようとする優秀な指導者だったが、一方で変人や変態と呼ばれることもあった。先生はシッテムの箱というタブレット端末や大人のカードという特殊なアイテムを持っており、それらを使って戦闘やハッキングなどを行うことができた。また、シッテムの箱のOSはアロナというマスコットキャラクターであり、先生のパートナーでもあった。

「え~、そんなつまらないこと言わないでくださいよ~。せっかくシャーレに来てるんだから、何か面白いことしないともったいないじゃないですか~」とホシノが不満そうに言った。彼女は面倒くさがりな態度とは裏腹に、支度を存外しっかりしているタイプだった。しかし、本人は自身が普段より少し積極的になっていることに気づいていなかった。妙に老成した振る舞いは相変わらずだったが、先生に対してどこか他人行儀だった過去に比べ、心を開き信頼を寄せていることが節々から伺えた。趣味は昼寝、ゴロゴロすることだった。

「面白いこと?例えばどんなこと?」と先生が興味を示した。

「そうですね~…」とホシノが考え込んだ。彼女は先生と一緒にいると、何でも楽しく感じることが多かった。先生は彼女にとって、特別な存在だった。しかし、それを素直に言えるほど、彼女は勇気がなかった。

「あ、そうだ。先生、今日はサンクトゥムタワーの見学会があるんですよ。あの巨大な塔を中から見てみませんか?」とホシノが提案した。サンクトゥムタワーとは、キヴォトスのシンボルであり、連邦生徒会の本部でもある超高層ビルだった。その内部は一般には非公開であり、見学会は年に数回しか開催されなかった。そのため、多くの人々がその謎に興味を持っていた。

「サンクトゥムタワーか…」と先生は眉をひそめた。先生はサンクトゥムタワーについて、ある秘密を知っていた。それは、シッテムの箱のメインオペレートシステムであるアロナちゃんが、一度その制御権を獲得したことだった。アロナちゃんは少女の外見をしており、人格を持ち、外見相応の知識レベルを有する高性能AIだった。彼女はシッテムの箱のシステム管理者であり、メインOSだった。現在はシッテムの箱の所有者である先生の業務サポートなどを主に行っていたようだった。プロローグで「シッテムの箱」の起動の際、生体認証及び認証書生成のために起動した。先生をアシストする秘書を自称していた。

「先生?どうしましたか?」とホシノが心配そうに尋ねた。

「あ、いや…別に何でもないよ」と先生は笑ってごまかした。「サンクトゥムタワーね…確かに興味深い場所だけど、見学会に参加するには事前申し込みが必要じゃなかったかな?」

「大丈夫ですよ~。私がもう申し込んでおきましたから~」とホシノが得意げに言った。「二人分ですよ~」

「え?二人分?」と先生が驚いた。「ホシノ、君は最初から俺と一緒に行くつもりだったの?」

「ええと…そうですね~」とホシノが照れくさそうに言った。「先生と一緒なら楽しいだろうなって思って…」

「そうか…ありがとう」と先生が優しく言った。「じゃあ、行こうか」

「うん!」とホシノが元気よく返した。

二人はオフィスを出てエレベーターに乗った。エレベーターは最上階から一気に地下へと降りていった。地下にはシャーレの専用車両が待っており、二人はそれに乗り込んだ。車両は自動運転で、サンクトゥムタワーへと向かった。

「先生、サンクトゥムタワーってどんなところなんですか?」とホシノが興味津々に聞いた。

「そうだな…」と先生は考えた。「サンクトゥムタワーは、キヴォトスの中でも最も高く、最も美しい建物だよ。その高さは約一千メートルで、その頂上には連邦生徒会の本部がある。連邦生徒会というのは、キヴォトスの全ての学校を統括する組織で、学園都市の秩序や安全を守る役割を担っているんだ」

「そうなんですか…」とホシノが感心した。「でも、なんでそんなに高い塔を建てたんですか?」

「それは…」と先生は言葉に詰まった。実は、サンクトゥムタワーにはもう一つの秘密があった。それは、その塔が実は巨大なアンテナであり、何かを発信していることだった。その発信内容や目的は不明だったが、先生はアロナちゃんからその存在を知らされていた。アロナちゃんはサンクトゥムタワーの制御権を獲得した際に、そのアンテナの存在を発見したのだ。しかし、先生はそのことを連邦生徒会に報告せず、自分で調査することにした。その理由は、アロナちゃんが容姿が現在行方不明中の連邦生徒会長に似ていることだった。先生はアロナちゃんと連邦生徒会長の関係性を探ることができるかもしれないと考えていた。

「それは…その…」と先生が口ごもっていると、

「先生、私が答えます」とアロナちゃんがシッテムの箱から声を出した。「サンクトゥムタワーは、キヴォトスの象徴であり、連邦生徒会の権威を示すために建てられました。また、塔の内部には様々な施設や設備があります。例えば、図書館や研究室や展示室や体育館や食堂や寮などです。見学会では、その一部を見ることができます」

「あら、アロナちゃんこんにちは~」とホシノが挨拶した。「ありがとう、教えてくれて」

「どういたしまして~」とアロナちゃんが返した。「私もサンクトゥムタワーに興味がありますから~」

「そうなんだ?」と先生が訊いた。「どうして?」

「それは…秘密です~」とアロナちゃんが言って、シッテムの箱に戻った。

「ふふ、アロナちゃんも可愛いですね~」とホシノが笑った。「先生、アロナちゃんと仲良くしてあげてくださいね」

「もちろんだよ」と先生が言った。「アロナちゃんは私の大切なパートナーだから」

「そうですか…」とホシノが少し寂しそうに言った。彼女は先生にとって、どれくらい大切な存在なのだろうか。彼女は自分の気持ちに気づいていたが、それを伝えることができなかった。彼女は先生のことを、ただの教師や顧問ではなく、もっと特別な人として見ていた。

車両はサンクトゥムタワーの前に到着した。そこには、多くの人々が見学会に参加するために集まっていた。二人は車両を降りて、見学会の受付に向かった。受付では、二人の名前と申し込み番号を確認した後、特別なバッジを渡された。そのバッジは、見学者の身分証明として機能するとともに、サンクトゥムタワー内の案内や通信にも使える便利なものだった。

「さあ、行こうか」と先生が言った。

「うん!」とホシノが言って、先生の手を握った。

二人は手を繋いで、サンクトゥムタワーに入っていった。その時、塔の頂上から白い光が放たれた。それは、誰も知らない秘密の発信だった。