「客に禁止行為をさせろ」メンズエステ店の秘密のルール

被告人はオーナーであるZから誘われて入店した。これまでもZの紹介で、複数のメンズエステ店で勤務をしていた。Zからは「あえて密着して、客に興奮をさせて触らせろ」と指示を受けており、「店として客に提示している禁止行為をさせて示談金を請求する店」とも説明を受けていた。

この店では、店長、従業員、Zなどが監視カメラで施術室内の様子を常に見ていた。禁止行為が発生し、被告人がタオルを倒して合図を出すと、客がシャワーを浴びている間などに男性陣が部屋に侵入し、恐喝行為に至る。直接的な恐喝現場に被告人は立ち会っていないが、客から違法に巻き上げた金銭のうち30%を報酬としていた。

被告人は、禁止行為をしてきた客の内、「合計で10人くらいから、あわせて約50万円の示談金を得ていたと思う」と供述した。今回、起訴された事件の被害者は2名だが、それ以外にも被害者がいたことを自ら認めたことになる。

被害者である客Aは、男性従業員から「どうしてくれてんねん、女の子泣いとるやろが」「警察行こうか」などと凄まれ、「婚約者にバレるのが恐い」との思いから恐喝に応じてしまったという。

「本当は200万だけど、150万でもえぇで」という男性従業員にAは「10万円なら」と答えたが、「話にならん、30万円なら女の子に話つけたるわ」と返されててしまう。友人に相談してなんとかお金を工面していた。

被害者Bはマッサージを受ける中で、被告人の陰部を触ったことを認めた。施術が終わり、シャワーを浴び終わったらそこには店長などが立っており「本当なら200万だけど、50万円でえぇわ。払わないと警察沙汰になるけどどうする?」「刑務所行くことになるよ」などと凄まれた。

Bはその場で警察を呼んだが、駆け付けた警察官に「最終的には関与できないから、当事者間で解決するように」と言われ、その場で10万円を払い、残りは分割で支払うという示談書を作成させられた。

被告人としては、当初は男性従業員らが恐喝行為をしているとは思わなかったと語った。ただ、従業員との会話で「今回は強く言ったんです」などの言葉が聞こえるようになり、方針が変わったのかなと思っていたという。そもそも、客も「女性に触ったら200万円を支払う」という同意書にサインをしているため、示談金が支払われることにも特に疑問を抱かなかったという。

検察官から、「示談金を請求する店、と説明を受けてどう思ったか」という犯行の悪質性の認識を確かめる質問では、「触ってくる人にちゃんと対処してくれる店なのだと思った」と答えた。

弁護人としても、今回の犯行の違法性は争っていないが、禁止行為に同意しながら強引に行為に及ぶ被害者にも一定の落ち度はあると主張するやり取りがあった。

判決は懲役2年(求刑同じ)、執行猶予4年、執行猶予の期間中は保護監察所から指導を受けるよう宣告された。