“ラーメン組長”「六代目山口組系三代目弘道会傘下『湊興業』組長の湊学こと余嶋学」


 神戸・長田区のラーメン店「中華そば 龍の髭」で22日に店主の余嶋学さん(57)が頭部を拳銃で撃たれ、死亡した事件は白昼の犯行と同時に店主が現役の暴力団組長だったことで、大きな衝撃を与えている。ラーメンをこよなく愛した店主はなぜ、足を洗わずにヤクザ稼業を続けていたのか――。

 余嶋さんは、口の中で発砲された可能性があるという。現場から拳銃は見つかっていない。余嶋さんが血を流し倒れているという通報があったのは22日午前11時ごろ。その約20分前に帽子をかぶった男が店に入る姿が付近の防犯カメラに写っていたことが判明し、兵庫県警は事件に関与したとみて行方を捜査している。

 余嶋さんのラーメン店は評判がよく、グルメレビューサイト「食べログ」の点数は5点満点中3・49と高得点。2016年から営業し、基本メニューの「ぼっかけラーメン」は550円、名物のテールラーメンは750円、名店の味を再現したビフテキは780円と安い値段でおいしい料理を提供していた。

 口コミでは「この値段ではもうけはありません。みなさんに喜んでいただければ」と語る余嶋さんの人柄が絶賛されたり、「常連客が多い」「優しそうなオジサン」と書かれたりしている。かなりの繁盛店だったようだ。

 同時に特定抗争指定暴力団山口組弘道会系組長でもあった。元暴力団関係者は「ヤクザは組に上納金を納めていれば暴力団の看板を背負っていられるんです。シノギの方法は問われません。一般的なヤクザは、暴力をちらつかせた威圧行為で稼ぐんですが、中にはサラリーマンとの兼業ヤクザもいます。例えば、1人組長だと組員を食わせる必要がないし、逆に組員からカネを吸いあげられないので、正業をやって上の組織に上納金を納めている人もいます。飲食店を経営しているヤクザは多いです。余嶋さんのように自ら店頭に立っていたのは珍しいですが、前の店長が辞めて、次の店長を見つける間のつなぎとして、自ら立っていただけのようです」と語る。

 店のインスタグラムに多くの自店のラーメン画像がアップ。自身のインスタは17年からスタートし、ラーメン食べ歩きと自身の画像を900枚近く投稿していた。暴力団の組長という感じはなく、ラーメン一筋の職人という雰囲気。インスタ画像から計算すると、年間200杯もラーメン食べ歩きをしていたようだ。

 しかし、11年には1億円恐喝未遂容疑、16年には道交法違反容疑、20年には詐欺で得たカネと知りながら現金10万円を受け取ったとして組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕されたことが分かっている。それらの事件の報道では「六代目山口組系三代目弘道会傘下『湊興業』組長の湊学こと余嶋学容疑者」と伝えられている。

「暴対法と暴排条例でシノギがなくなり、やめる組員は多く、1人組長が増えています。普通、組長が引退するといえば、組員が繰り上がりでえらくなれるから、組員が喜んで送り出します。しかし、1人組長の場合、組が減ることになるので、上の組織からやめさせてもらえません。余嶋さんはまじめに安くておいしいラーメンを出していたので、“ラーメン組長”として、ある意味でヤクザ業界の有名人でした。家族がたくさんいて、もう逮捕されるシノギをやることに疲れたのかもしれません。余嶋さんは組織に籍を残しながら、好きなラーメン店をやっていたようです」と前出関係者。

 余嶋さんは神戸で唯一の弘道会系組長だった。地元住民によると発砲音が4発聞こえたといい、現場に拳銃はなかった。県警は暴力団同士の抗争事件の可能性も含めて捜査している。