ビットコインはProof of Works(PoW)ですが、われわれはProof of Gameing(PoG)です

STEPNを「普通の人」がやっているのを見て

 従来のゲームは、ユーザーからお金をいただいて、楽しさを提供するものでした。そこにプラスの要素として、儲かるとか経済性を伴うことがエポックメイキングなことかもしれない、と強く思ったんです。

 きっかけは「STEPN」です。今年の4、5月ごろに、IT系ではない僕の知り合いがプレイして「10万円儲かった」などと話していて。一般層に普及したと実感しました。一般とは、日本の人口の10%。コロプラのゲームのプレイヤー層と同じぐらいです。

 STEPNをプレイするには、トークンを買い、海外の取引所で換金して……とハードルが高いはずですが、そこを乗り越えて一般層がプレイするだけのパワーが、「ゲームをすることでお金が得られる」という体験にある。これは確かに、ゲーム史に残る新しい体験だと改めて思い、「作ろう」と思いました。

ブロックチェーンは初期からウォッチしていました。ビットコインの後、イーサリアムが出てきて、ブロックチェーンゲームの走りである「CryptoKitties」(仮想猫を購入、繁殖させるゲーム)が出た。CryptoKittiesは、ゲーム性はあまりなかったけど、NFTとゲームの取り合わせが面白くて、自分でも作ってみたいと思っていました。

 ただ、日本でやった場合、いくつかの法律に違反してそうだな……と思いとどまっているうちに、カードバトルでトークンがもらえるAxie Infinityが出てきて。Play to Earnは面白いと思ったものの、原資となるトークンの価値がどこからも生まれていないことが気になりました。

 そしてSTEPNを一般の人がやっているのを見て、自分でも作ろうと思ったんです。

 ただ、ゲームプレイで他人の価値を作らないと、公式が解けない。これがとても難しくて、3日ぐらい悩んで、アイデアが浮かびました。

「ビットコインのようなゲーム」 面白さは「スルメ」ぐらい

 具体的にはまだ秘密なんですが、ヒントはビットコインです。ビットコインは、台帳のデータを証明するために、マイナーがコンピューターを使って、世界一無駄な、意味の無い計算(ハッシュ値の計算/マイニング)をして、その報酬としてビットコインがもらえる。無駄な計算をした結果が、1ビットコイン数百万円という結果につながっているんです。


 仮想通貨は、根本の部分がクラックされたことはありません。ヒューマンエラーによるカギの流出などはありますけど、仮想通貨の本質的なシステムが破られたことはない。マイナーの“無駄な計算”が、ビットコインのシステムを維持し、他人の価値を作り出している。これをゲームプレイに置き換えたら、成り立ち得ると思ったんです。

 ビットコインのようなものをゲームに組み込む。条件は「面白いんだけどけどそんなに面白くない」こと。ハッシュの計算がすごく有益だったら、みんなやっちゃうから、それでは価値がないんです。ただ、ゲームとしてはある程度は面白くないといけない。ゲームがめちゃくちゃ面白いと、成り立ち得ない。

 スルメのような面白さを目指しています。おかずのメインにはならないけど、なんか美味い、たまに食べたくなるな、という。ただ面白すぎてもダメだから、面白いけど面白くない、微妙なところがゲームに求められる役割です。「プチプチ」みたいな。

 プレイすることがほかのプレイヤーや第三者の価値になる。これこそ本当のトークンエコノミーだと思います。その立て付けが大事で、それがうまくいかなければ失敗します。ビットコインはProof of Works(PoW)ですが、われわれはProof of Gameing(PoG)です。


今メタバースが盛り上がっていますが、いつか全てが、仮想に流れていきます。人がそこで生活するには経済性が必要です。これが今までのゲームにはなくて、仮想通貨やNFTと、とても相性が良い。

 例えば、メタバースでフェラーリに乗りたいとき、勝手にフェラーリのモデルを作ると偽物ですが、フェラーリ社が1台1000万円で限定販売して、本物だと表示されるようになれば、偽のフェラーリに乗ることがダサくなる。どんなブランドでもそういうことが行われていくと思います。

 でも、現実世界を見た時、それでは解決しないものがあって、われわれはそれを解決しようとしています。それを解決することが報酬になっている。今まで誰も証明できなかったことを、ゲームの力で証明したい。Proof of Gamingです。


 ブロックチェーンがないと生まれなかった種類のゲームです。「なんでこんなことをさせるんだろう?」と思うような、見たことないゲームです。この仕組みは、ゲームの一部ならあり得るし、実際にあるんですけど、単体ではゲームにならない。それが、ブロックチェーンがあるから、成立しそうなんです。

 プロジェクト名は「マッスル」です。筋肉は必要ですが、筋トレではないですよ。体は動かしますが、歩くことは関係ない。来年(2023年)の4~5月にまず、機能を限定したβ版を公開する計画です。

 マルチプラットフォームで出そうとしています。iOS版も出せれば出したい。App Storeの規約でNFTゲームがダメなので、どうなるか分かりませんが。

 僕、だいぶ業界をけなしましたが、僕が作っているものも、問題を100%解決するかは分からない。自信があるかないかというと中庸です。僕の仮説が正しければワークするし、間違っていれば失敗すると思うので……新しすぎるので、成功の確率は高くないです。

 もしすべてが100%うまくいけば、日本を代表する産業になり得るパワーを持っています。リアルな世界でそれぐらいの市場規模があるものを別の世界に持ってきて、そのまま再現できたらそうなる。達成確率は低いですけど。


 既存のものには興味がなくて、新しいものが好きなんです。新しい種類のゲームに、すごく興味がある。新しい価値を足すゲームを作りたい。だからブロックチェーンもやりたくて。


ゲームはそうやって進化してきました。もともとは、大きなコンピュータでブロック崩しなどから始まり、端末が小さくなり、ネットワークゲームになって他人とコミュニケーションできたり、スマホでどこでも持ち出せたり……。初期にゲームを開発した人は、ゲームがコミュニケーションになるなんて思っていなかったでしょう。

 「歩く」「移動する」を、おそらく世界で初めてゲームにした「コロプラ」を作った時、「移動がゲームになるわけない」と言われていました。今や「Pokemon GO」や「ドラゴンクエストウォーク」、STEPNもですが、移動はゲームになり、一定のポジションを確保しています。

 ゲームで稼ぐことは、人々が直感的に「楽しい」「面白い」「いいな」と思う要素の一つですから、これがインプリされたものが出てくれば、ほぼ全てのゲームに薄く、広く入っていくのではないかと思っています。全部が全部そうなるとは思わないけれど、ちょっとずつ。