急性大動脈解離の前触れ

急性大動脈解離にこれといった前触れはない。

俺の場合はなかった。

ある夜突然胸の真ん中にドーンと痛みが来た。10分ぐらいすると痛みはうそのように消えた。

俺は気持ち悪かったので救急相談センターに電話した。

救急相談センターの人に話すと、すぐ診てもらったほうが良いと、その時間に受け付けてくれる病院を教えてもらったのでタクシーをつかまえてすぐに向かった。

裏口から入る薄暗い受付で問診票を書いて、数分待った。

診察椅子で少しやり取りをして、血圧を測った。

まるでデタラメな数値だった。

すぐさま緊急入院が決まり、連絡先というので実家の電話番号を言って、麻酔ガスを吸った。

実人生でカットが変わる稀有な体験をした。

大動脈解離というのはようするに動脈硬化の結果、古くなったゴムチューブのように動脈に裂け目ができる事を言う。動脈の皮膜は3層に分かれていて、俺の場合は心臓から出てすぐの大動脈の一番内側の層が裂け始めていたようだ。

私の父も、『胸が苦しい』と言って自分で救急車を呼んで乗っていき、そのまま帰らぬ人になりました。

無事に帰還されたのが、何よりです。

判断早くてよかったです。
私の臨床経験で生還されている方は1割程度ですから。