伊藤は大隈より碁が下手

伊藤は大隈より碁が下手であったが、「伊藤公は最初から余程慎重に考えて打つのに、大隈候の方は、何も考えずに大まかにポンポン打つ。そうしている内に、だんだん局面が不利になってくると、候はそこで初めて考える。もとより頭脳の良い人であるから、妙な窮手を考え出して、どうかこうか血路を拓くことはあるが、候が考えるときには、既に局面が収拾すべからざる状態にまで立ち至っているのだから、結局負け碁になることが多かった。伊藤公は、初めから定石通りに、十分慎重に考えて打つから、破綻が少なく、大隈候は難局に向わなければ、智慧を出さないのだから、天才的な閃きはあっても、結局は敗けることになる。これが両君の性格における著しい相違であった」