【朝日新聞】権力者が知られたくない事実を書くことよりも「先に書く」ことが優先されている

取材相手とつきあい、酒を飲み、長い時間を過ごし、信頼関係を築くことで、本音を引き出し、人柄、考え方を知る。権力の中枢で何が起きているのかを探る。政治記者のこうした努力を心から尊敬する。問題は、権力者が知られたくない事実を書くことよりも、「先に書く」ことが優先されていること。

布マスク配布を誰がなぜ決めたのか。なぜ30万円が10万円になったのか。中枢でどんな権力争いが起きているのか。これらを知るために政治記者が取材相手に肉薄する。大事なことは相手と一体化することじゃない。それを忘れた記者はいるかもしれないが、多くの政治記者は権力監視のために取材している

どれだけ厳しいことを会見で聞こうが、記事を書こうが、取材相手との信頼関係は築ける。厳しいことを書くから付き合わないとか、付き合ってくれないから厳しいことを聞かないという関係は、信頼関係じゃない。理想論だと言われようがそれを信じなきゃやってられない。

取材相手に肉薄し、そこで得た情報を記事にすることでしか、読者からの信頼は得られない。私自身も含め、メディアにいる人間がこの点を反省し、出発しなければ、政治報道の不信はさらに深まるだけ。