若い人には、目先の「お金の不安」に負けず、本質的な働き方をしてほしい

新卒のころはお金の不安とかありましたか?

不安は…ありましたね。

ホームセンターに入社前は、「初任給20万円」ってきいてたんですけど…

ユニフォーム代」とか「組合費」とか、なんだかんだ引かれて、手取りが11万円ぐらいになって

さすがに衝撃でしたね。

1人暮らししてたので、家賃が4万円。クルマも買ってたのでローンが毎月2万円…そうすると残りは…

5万円…

友だちの結婚式に呼ばれたら死亡するレベルなんですよ。

そんなお金の不安を、どうやって解消したんでしょうか?

「最初の会社はあくまで投資だな」と割り切ってました。そのぶん新卒のうちしかできない、“あとから給料を上げられるような経験”を積もうと。

キャリアアップで年収を上げていく方法として「軸ずらし転職」を提唱してますよね。「自分の持っているスキルが重宝される場所に、業界をずらして転職していく」という。

そうです。なので僕は新卒のときも、ポータブル、つまり「転職しても持ち運び可能なスキル」を身に着けることを意識して働いてました。

なんて新卒なんだ…自分が新卒のころは「ネクタイってきついな」と「お金足りないな」しか考えてませんでした。

入社してすぐに身に着けたのは“働く姿勢”。

なかでも具体的に挙げるなら、「実行力」と「違和感」です。

実行力っていうのは、「やってみる」力のこと。僕は、スキルというのは「経験を通じて身に着くものだ」と思うんです。

自分で実行するクセさえつければ、自然と経験が増えていくから、さまざまなスキルを手に入れやすくなる。つまり、これが成長の土台になるんです

一方で、「なんでこんなことやるんだろう?」っていう違和感も大事にしてました。

僕が新卒のときは、違和感を覚えたときに「この仕事は何のためにやるのか?」「もっと効率化できないか?」って考えてたんですよ。これをしないと、意識不明で仕事してるような状態になるので、スキルが身に着かない。

「違和感」は新参者の特権です。会社や業界に長くいる人ほど“染まってる”から、「社内の当たり前」を疑うことがない。

あと、この「違和感を持つクセ」は、ビジネスの世界で長年使えるスキルでもあります。

「なんでこの業界はこうなんだろう?」っていう素人ならではの“違和感”は、自分の仕事だけでなく、事業を考えるうえでも役立つんですよ。

たとえばリクルートのビジネスは多くが「違和感」から展開されているんですよね。

「美容院探しにくいのはなんでだろう?」「結婚式場の情報がまとまってないの、なんでだろう?」みたいな、普通の人が感じる違和感に事業をあてているんです。

しかも、リクルートには「営業部隊」という武器があるじゃないですか。

そしたら、自分たちの武器を“違和感を覚えた領域”に当てていけばいい。極端な言い方をすれば、違和感さえ見つけられれば勝ちみたなところがあるんですよね。

すごい、違和感は“カネになる”んですね…!

ただ…「なんでこんなことやらなきゃいけないんだ?」って違和感を覚えてしまうと、“黙って実行”ができなくなるときありますよね。どっちを優先すべきなんでしょうか?

僕はそこについて、本質的に矛盾しているとは思わないんですよ。

“新卒は素直でいいやつであれ”ってよく聞きますが、「言われたことをやりましょう」という素直さだけじゃなくて、「別の素直さ」も必要だと思うんです。

自分の「違和感」に対して素直になることです。

「本当にこのやり方でいいの?」って素直に思えること。そしてその違和感を大事すること。

「ハイ、やります!」っていう素直さだけでは“兵隊キャリア”になっちゃうんですよね。兵隊にキャリアアップは望めない

紙一重なところですけど、両方の素直さをバランスよく持っておいたほうがいいと思います。

旅行もいいと思いますけど、年収を上げたいという観点でいうと、「お金を稼ぐ解像度」を上げておくといいかもしれません。

たとえば、自分個人でお金を稼ぐ経験をするとか。

お金を稼ぐ? バイトしろってことですか?

いや、アルバイトじゃないです。

なんでもいいから「雇われる」という形以外で「お金を稼ぐ経験」をするといいです。そうすると、社会人になったときの目線が変わる。

「note」を売るとか、なんでもいい。今はスキルをオンラインで売買できるプラットフォームとか、いろいろありますよね。

1円でいいから、“もらう”んじゃなくて“自分の力で稼ぐ”ことをしてみる。 そうすると、「どうしたらもっと儲かるようになるのかな?」って、事業をスケールさせる思考になる。

この経験をしておくと「何も考えてない新卒1年目」ではなく、「新人なのに、ひとつ目線が高いヤツ」になれます。

では、すでに入社している新卒社員にオススメする“過ごし方”はありますか?

労働市場における自分の値段を常に把握しておくことですね。内定者には値段がつかないけど、入社すると値段がつきますから。

ちなみに僕は、1年目からずっと転職サイトをチェックしてました。

「求られめる人物像」と「その年収」です。「○○な能力があれば、このくらいの値段になれる」という“相場感”をつけるんです。

求人票には「マネジメント経験○年以上」「年収○○○万」とか書かれているので、「自分との差分」がわかります

それさえわかれば、力をつける働き方をすればいいだけです。マネジメント能力が必要なら「マネージャー経験を積みたいので、やらせてください!」って自分から手を挙げてみるとか。

ただ、自分も含めて一定数の人って「いくらほしい」っていう希望があんまり明確にないと思うんですよね…なんとなくでしか考えられないというか。

希望年収を具体的にするためには、オープンにお金の話をすることに慣れるべきだと思います。

僕は「今の家賃はどれくらいですか?」とか「クルマ持ってます?」と、まわりの人にカジュアルにきいてます。それによって「いくら稼げばどういう生活になるのか」がわかるようになってきます

僕、人に収入をきいたことって1回もない気がします…きかれても答えないですね。収入の話題が失礼っていう感覚はないんでしょうか…?

全然思ったことないです

年収は、自分の値段です。その人がどんな評価をされている人なのかが端的に表されているもの。

転職活動ではしっかりと年収の話をするのに、普段の仕事で年収について話すことはタブーみたいな空気がありますよね。

僕は、自分の職場の上司にも年収をきくべきだと思います。

でも、“職場の上司がいくらもらってるか”はかなりリアルなロールモデルですよ。

そこが不透明なままなんとなく会社にいたって、市場価値も上がらないし、稼げる人間にはなれないです。

「頑張って働いてきたのにこれかよ…」って、40代、50代になって後悔しても遅くないですか?

新卒のときから「転職前提」でキャリアアップを考えて働くのって、正直どうなんでしょうか? あんまり仕事に集中してない感じがしてしまうというか。

たしかに、最近そう言われることがちょっと増えましたね(笑)。

僕が推奨してるのは、「会社の看板に依存しない働き方」です。そのためには、個人で力をつける必要がある。そもそも、会社で成果を出さないことにはいい転職はできません

転職はあくまで、年収を上げる「手段」。

新卒のうちに“スキルを身に着けて、自分で稼げるようになる”という視点を持って働くことは、これからの時代に必要なことだと思いますよ。

むしろ仕事に集中して成長すべき、という考えなんだと。

僕もいろんな会社の面接で、「どうせまた転職しますよね?」って言われることがありますけど、本音を言えば、誰がいつ転職するかなんてわからないし、それを決めるのは個人の自由ですよね。

むしろ「一生この会社から出ません」なんて“建て前”じゃないですか。

江戸時代には「脱藩するのは武士としての恥!」と言われてたそうですけど、転職イコール裏切り、みたいな受け取り方をする人は、まだ大勢いるんでしょうね。

たしかに、転職を絶対考えちゃいけないなんてわけないですもんね。

会社の看板に依存せずに成果を出せるスキルが身に着いたら、その会社にとどまるか転職するかを考えればいいんです。転職がすべてではなので、その会社に残るという選択をしてもいいわけですし。

若い人には、目先の「お金の不安」に負けず、本質的な働き方をしてほしいなと思いますね!