『ダウントンアビー』のロバート・クローリ伯爵の気分

フロリダ来て貧困というコトに対する国民性の違いを痛感しています。

ある日、うちの玄関を「ドンドン!」と猛烈な勢いで叩く奴がいた……それで玄関に出てみると30歳くらいの黒人のおねえさんが仁王立ちしていた。

「〇〇ちゃんは、いないの!?」と切羽詰まった声でオレに訊くわけです。
「あの、ここは僕の家で、最近、SFから越して来たんです。ここにそういう人は居ません」と言ったら、その黒人のおねえさんが大粒の涙流し始めた。

なんでもこの家の以前のオーナーの下宿人が、彼女の友達だったらしい。黒人のおねえさんは、その友達におカネをせびりに来たというわけだ。「今日、おカネが工面できなければ、私は今の借家から追い出される!」

黒人のおねえさんは延々と事情を話し始めた。
「そうか、そりゃタイヘンだな。ところであんた、名前は何て言うの?」
「スタア」
「Star?」
「そう、スタア!」

(スタアだかMoonだか、何だかわかんないけど、まあオレが冷たく扱ったせいで彼女がホームレスになってはマズイだろな?)

そう思ったので手元にあった3万円渡して「これで何とかなりそうか?」と訊いたら「やってみる」と言う。

それが腐れ縁のはじまりだ(笑)

スタアは、やれサンクスギビングだと言うと「感謝祭なのに幼い息子にサンクスギビング・ディナーもしてやれない」と言って嘆き、クリスマスには「プレゼントも上げられない」と愁嘆場を演じては、じっちゃまからおカネをせびるわけだwww

「ドンドンドン!」とドアを叩く音がすると(またスタアか……)とウンザリさせられるけど、その度ごとにスタアはいろんなcrisisのストーリーを捏造してじっちゃまからおカネをせびってゆく。まるで税金だ。

そうかと思えばトランプ大統領と議会が予算交渉を巡り対立したとき、公務員の一時帰休が発表されたときがあった。無給で…自宅待機。そのときも「ドンドンドン!」とドアを叩く奴が居る。スタアかと思ったら、今度は白人のおじさんだ。

「俺は公務員なんだが、一時帰休になってしまってカネに困っている。アンタ、いい家に住んでいるけど、ドライブウェーが黒ずんでみすぼらしい。オレがパワーウォッシュで真っ白にしてあげよう」

フロリダは亜熱帯なので確かに舗道は放置しておくと苔みたいなのがむして汚くなる。「そんじゃひとつお願いしようか…」ということでおカネ渡したら、そのおじさんのボロボロのピックアップトラックから少年が出てきて、パワーウォッシュを手伝っている。息子だろう。

「あそこ行きゃ、なにか仕事呉れる!」…そういう噂が立ったのか、やれ庭の手入れをしてやるとか、壁の汚れを綺麗にするとか、そういう売り込みをしてくる人が後を絶たない。まるで荘園を経営しているようなもんだ。

『ダウントンアビー』のロバート・クローリ伯爵の気分が、わかった気がした。