「買い手のつかない人間はどうすりゃいいのよ」

「本体を生き残すために、手足はばっさりだよ」と彼はいった。「え?ばっさりなんですか。ある年齢未満もですか?」と尋ねると、45才未満で本体に戻れるのは本体から出向してきている人材と、特に有望な人材だけで、「その他は…」と言った。

「その他は…」と言った。その他…の先を聞く気にはなれなかった。パート、派遣は全員雇止め。45才以上は、残ろうと思えば残れるけれど、縁もゆかりもない地方へ飛ばされるか、まったく違う仕事をやらされるか、の地獄の二択。45才未満も同じだった。本体に残れる一部を除けば身の振り方を考えなければならなくなった。退職を選んだ若者もいるらしい。

彼は、本体はまだましだよ、といった。「グループで何人て言い方するでしょ。そうすると本体が厳しいリストラをしてるように見えるけれど、実際、ばっさり切られているのはウチみたいな末端なんだよね。ウチでも本体から来ている上の人間はトシがいってても本体に復帰できてるわけだから」という彼の顔は清々しかった。もう吹っ切れたのだろう。

それから彼は、しばらく頭から離れなくなりそうな強烈な言葉をつづけた。「買い手のつかない人間はどうすりゃいいのよ」