【投資考察】VIXが落ち着いているのに日本株だけが弱い?――逆流するリスクシグナルの背景とは



いつもはVixアメリカの不安定が日本にも影響していく流れだったが、最近は日本から、もしくは日本だけが起きる珍しい事例が。

思い当たる節はトランプ政権の自動車メーカーへの重課税関税くらい。この取引の先読み不安が数値化してんのかな?


【投資考察】VIXが落ち着いているのに日本株だけが弱い?――逆流するリスクシグナルの背景とは

2024年までは、世界的な株式市場の不安定化はたいてい「VIX(恐怖指数)の急上昇」から始まり、それが米国→欧州→アジアと波及する流れが一般的でした。しかし最近、違和感のある動きが出ています。

VIXは落ち着いているのに、日本株だけが売られる。
米国株は堅調なのに、日経平均は大きく下落する。

この“逆流現象”の背景にあるものとは何なのか。市場参加者の不安を可視化し、整理してみました。


■ トランプ政権復帰の可能性と「関税ショック」の予感

もっとも説得力を持って語られているのが、トランプ前大統領の再選可能性にともなう通商リスクです。

2024年に入り、トランプ陣営は「米国第一主義」政策の復活を明言しており、特に日本の自動車メーカーに対する重関税(25%)の再導入を示唆しています。これが現実味を帯びれば、トヨタ・ホンダ・日産など、米国販売依存度の高い企業の業績は直撃を受けます。

VIXはこうした日本特有の貿易リスクを織り込まないため、VIXが平静でも日本株は下落するという“非対称な市場反応”が起きているのです。


■ 日銀の政策スタンスに対する「読めなさ」も材料に

加えて、日銀の利上げや政策修正への不透明感が増しており、投資家のポジション調整が進んでいます。

・利上げの有無は常に市場の話題になるものの、明確なスケジュールや基準が見えにくい
・為替が円安に振れても株価に好影響が出ない「スタグフレーション的構図」への懸念

この結果、海外投資家から見て**「読みにくい市場」=ポジションを減らす市場**になっている可能性があります。


■ 海外勢の利益確定と、NVIDIA頼みの半導体バブル感

2023年から日本株は好調で、特にAI・半導体関連が強く牽引してきました。しかし2025年に入ると、

  • NVIDIAを中心としたAI相場のピーク感
  • 日本の半導体株も一巡した感触
  • 円安にも関わらず株価がついてこない乖離

こうした状況から、利益確定売りの対象として日本株が選ばれている構図があります。これは短期的には自然な動きですが、売りが売りを呼ぶ形で日経平均にマイナスのスパイラルを生んでいます。


■ 「VIXでは測れない不安」が日本を揺らしている

VIXが反応しないからといって、市場が安定しているとは限りません。VIXはあくまで「米国の株式オプション市場」の指標であり、日本独自のリスク(通商、政策、為替、災害)などは一切カバーしていません

現在の日本市場では、

  • 地政学リスク(台湾有事や朝鮮半島情勢)
  • 首都直下・南海トラフ地震など物理的リスク
  • 国債金利の上昇に対する警戒
  • 政策変更(防衛増税、社会保障見直しなど)

といった「日本発の不安」がじわじわとマグマのように市場を冷やしています。
これはVIXには映らない「ローカル・リスク」であり、海外勢が先回りで売っている構図が見て取れます。


■ まとめ:日本株だけが売られている理由は、織り込まれ始めた“未来の現実”

✔ トランプ再選による関税圧力
✔ 読みにくい日銀の政策と為替のねじれ
✔ 半導体相場の一服と海外勢の利確
✔ 国内に根差したリスク(政策、災害、地政学)

これらが複合的に絡み合い、**「VIXが低くても、日本市場だけが冷やされる」**という、やや異質な現象が起きています。

この動きは一過性のものか、それとも構造的な転換点なのか。今後の値動きに注視しつつ、ポートフォリオの地域配分やセクター選定にも注意を払いたいところです。


以上、日本株をめぐる“逆流リスク”の構図でした。
皆さんの投資判断の一助になれば幸いです。