【キム・ヨンハ 統括】「ブルーアーカイブ」は「2次元キャラクターコレクションゲーム」


キム・ヨンハ 統括プロデューサーは、「ブルーアーカイブ」のようなゲームのジャンルを「2次元キャラクターコレクションゲーム」と分類した上で、「2次元キャラクターコレクションゲームのロマン」というテーマを掲げた。

「2次元キャラクターコレクションゲーム」は、主にモバイル向けに展開され、日本アニメ風のグラフィックを採用し、多数のキャラクターが登場、いわゆる「ガチャ」でキャラクターを獲得し、獲得したキャラクターを育成したり、キャラクターと交流したり、ストーリーを読んだり、獲得したキャラクターでコンテンツを攻略をするゲーム全般を指す。

ジャンルの核心は「キャラクターに対する”愛”」

キム・ヨンハ氏が考える、2次元キャラクターコレクションゲームの祖先のような存在は、「プリンセスメーカー(1991)」「Fate/stay night(2004)」「拡散性ミリオンアーサー(2012)」

これらのゲームは魅力的なキャラクターを中心にしたゲームの作り方において良い手本となった

近年の「2次元キャラゲーム」ジャンルの核心は「キャラクターに対する『愛』」

プレイヤーが美形キャラクターとの仮想恋愛を楽しむ「恋愛シミュレーションゲーム」的な要素が、「2次元キャラクターコレクションゲーム」の中核に存在する

実際、「ブルーアーカイブ」開発チームは、恋愛ADVや恋愛シミュレーションゲームを作るのに似た感覚で制作している

恋愛アドベンチャーゲーム/恋愛シミュレーションゲームには「女性向け」と「男性向け」の文化が存在する。

以前担当していたゲームでは美少女と美少年の両方を登場させたが、バランスを取るのが非常に難しく、どっちつかずなものになってしまい残念だった

曖昧な感じで作るよりも、得意な方に集中し、男性向けなのか、女性向けなのか、方向性をしっかり決めることが重要

キャラクターの魅力を引き出すには

個々の要素を単純に組み合わせるだけではキャラクターに魅力は生まれない

キャラクターの背景、物語上での役割、キャラクターの見せ方を組み合わせて、コンテキストを伝えることが重要

シナリオがキャラクターを作る上での土台となる

世界がどういった設定で組み立てられているのか、どのような物語が展開されるのか、脈絡と蓋然性が確保されていれば、制服を着た女子高生達が銃を持っていても、覆面を被って登場しても問題ないし、その方が良いという状況も生まれる

恋愛ゲームのように構成するのであれば、「プレイヤーは何者なのか?」「プレイヤーとキャラクターの関係は?」「プレイヤーは何をするのか?」「どうやって交流するのか?」という問いに対する回答に明確な立場が必要

ゲームのビジュアル、用語、システム、インタラクション、全体的な体験は統一感があるように構成されるべき

ブルーアーカイブのUIはタブレット端末を操作するというコンセプトに合わせて制作された

シナリオではプレイヤー(先生)のセリフは選択肢だけで出るようにしたり、メッセンジャーアプリを使って生徒と会話するようにしたり、こういった細部がゲーム世界の臨場感を高め、シナリオやキャラクターと連動して魅力を向上する相乗効果を生み出す

ゲームにおけるストーリーはおまけのようなものではないか?と聞かれることがあるが、少なくとも「2次元キャラクターコレクションゲーム」ではストーリーは本当に重要

キャラクターの魅力を表現するためにシナリオは不可欠

そのためにはしっかりとした世界観の基盤が必要になる

開発組織について

シナリオや世界観以前に、開発組織を作る過程で考慮するべきことがある

「2次元キャラクターコレクションゲーム」を作るためには、感性に対するビジョンを設定し、これに対する共感を通じた組織の編成が必要

ゲームのビジョンを各セクションの仲間と具体化する過程で、技術的な部分以外にも、キャラデザやストーリーテリングなどの様式がゲーム全体の雰囲気やキャラクターのディティールにも影響を与える

ブルーアーカイブの開発初期に「他のゲームがやったことがない領域で、獲得したキャラクターに対してもっと愛着を感じられる美少女コレクションゲームを作ろう」という抱負を開発チーム内で共有し、感性が合う開発スタッフを探す過程を重要視した

開発チーム全体のコミュニケーション環境の構築にも気を配る必要がある

各自が担当する作業に対するより広い視野での理解度やモチベーションが品質に影響を与える

ブルーアーカイブの開発チーム内では140人のスタッフが250以上のチャンネルでやり取りをするなど、活発な交流がある

開発スタッフ達も一人のプレイヤーとしてゲームを楽しんでおり、プレイヤーが期待するものが何なのか明確に把握している

最近ではウェブコミックやウェブ小説出身のクリエイターがゲーム業界に多く参入している


二次創作と商品化

ゲームの物語がゲームの中だけでなく、ゲームの外、プレイヤーの生活にも浸透し、思い出に残ってほしいので、二次創作の活性化、オフラインイベントや商品展開にも力を入れている

二次創作は非常に重要であり、ブルーアーカイブではキャラクターデザインをあえてシンプルにし、ゲームの外でユーザーが扱いやすいようにすることを念頭に置いた
フィギュア、漫画、アニメ、グッズなど、様々な方向にメディアミックス展開されるのが「2次元キャラクターコレクションゲーム」のジャンル的特徴

ブルーアーカイブでは制作中のものも含めて50種類以上のフィギュアが作られた

ブルーアーカイブでは基本的に二次創作は奨励するが、許可を得ずに販売サイトを運営するといった商業行為は権利者の立場からは看過できない問題。

しかし、線引が難しい


2次元コンテンツ市場の成長

AGCN(アニメ・ゲーム・コミック・ライトノベル)といった2次元コンテンツの市場が成長を続けているため、2次元キャラクターゲームの市場も確実に成長していく見込みだと考えている

デジタルストリーミングのようなOTTサービスの普及により、2次元コンテンツへの参入障壁がかなり下がった

一人暮らしの世帯が増加している社会的な傾向も、2次元キャラクターゲームへのニーズ増加に肯定的な影響をもたらすと予想

キム・ヨンハプロデューサーが注目しているトレンドは「VTuber」と「AIキャラクター」

「VTuber」はゲームとは少し異なるエンターテインメントの領域にあるが、2次元コンテンツを大衆化に導く一翼を担っている

以前に担当していた「FOCUS ON YOU」というゲームでは音声認識を活用し、ブルーアーカイブでもアロナのボイスに音声合成を活用した

AIを利用してキャラクターとの交流を補完したり、強化することは今後も有望だが、AIがキャラクター性を保ちながらプレイヤーと自由な交流ができるのか、どの程度の距離を保てば成立するのかなど、引き続き検証が必要

アロナのAIボイスを活用したツールやサービスは契約の関係で難しい。アロナの合成音声はゲームの中だけで使用可能な契約になっている。ゲーム外で使われるものは全て個別に録音をしている。


(開発者がネットミーム化することについて)2次元キャラゲームのジャンルは開発者とプレイヤーの距離が近いと思う。開発者達もコミュニティの反応をよく見る方で、ミームが作られること自体、プレイヤーの関心が高いからだと考えて感謝している。そこで様々なフィードバックを得て刺激され、もっと頑張らなければいけないという考えを持った

キャラクターの「性能」は常に扱いが難しい。性能とキャラクターの個性は分離しなければならないと考えて開発をしている
PvPのような性能が極端に影響するものはなるべく実装しないように考えている