【TwitterX】最近のシェアオフィス事情




当社では40㎡程のスモールオフィスを中心に、渋谷区など都心部において70棟のオフィスを企画運営していますが、その様なオフィスがコロナ収束でどのように変化をしているのか?今回は需要の変化なども踏まえ解説したいと思います。

この3年を振り返ってみると、大型オフィスに比べ動きの多いスモールオフィスですが、コロナ禍では契約・解約数の増加から、更に動きが多かったと感じます。
コロナ禍でも稼働率95%以上を保ち、賃料売上の大きな下落などは無かったのですが、テナント入れ替えの為に、営業部はもちろん、HP更新や原状回復、契約書類作成など様々な部署が業務過多となり、それなりに人員補強の必要がありました。
業務の多さとテナント入れ替えによるタイムラグにより、稼働率もコロナ前の98%台から95%台へと徐々に下落する形となりました。


コロナ禍がほぼ収束した、23年の1月以降、契約・解約数の動きは落ち着き、稼働率も上昇傾向、テナントの定着も進んでいることから、業務量も安定してきました。
需要の変化では、23年3月に比較的大型のオフィス区画や店舗などで解約が相次ぎました。DX関連事業やデリバリー関連事業などコロナ終焉を受けて、今後更なる拡大をする企業の拡大移転と業績が伸び悩んだ企業の撤退などで、解約がピンポイントで固まった時期だったと思います。

その後の空区画ですが、現在はコロナ前に需要の高かった家具等のショールームや、美容関連企業の研修所、ハイブリット型勤務企業のキッチン付オフィスなどの需要が高く、現在では順調に契約が進んでおり、当初の平均稼働率も今年の9月頃には98%台に回復すると思われます。
渋谷付近のスモールオフィス需要は、コロナ前の水準に回復しつつあります。


国内のシェアオフィス業界に目を向けてみると、年々フレキシブルオフィスの面積は増えており、今後も順調に伸びていくと思われます。
そんな中、比較的築浅のビルに出店している大規模シェアオフィスが撤退する情報を良く耳にするようになりました。

2018年あたりから、外資・国内問わず多くの企業がシェアオフィス事業に参入し始めましたが、資本力の豊かな大手は、新築ビルを中心に出店、拡大していった傾向があります。新築ビルでのシェアオフィスは当然利用料も高額になります。

一方でシェアオフィス利用者の多くはスタートアップ企業や中小企業となります。

高額なシェアオフィスニーズは、大企業のサテライトニーズや資本力のある一部のスタートアップ企業のニーズはありましたが、コロナ禍を経てその様な会社が減り、需給のバランスが崩れてきているのが撤退の原因と考えられます。


築古ビルの再生を主体に事業を行っている当社ですが、最近では大型新築オフィス内にシェアオフィスを企画し運営して欲しいとの相談が増えています。

新築や築浅ビルでのシェアオフィス事業は、利用料が高額になりリスクが高まるとお話しましたが、それはシェアオフィスフロアのみが独立して運営している場合に限ります。

今回は、ビル全体の価値を上げる為、入居企業全社が利用できるシェアオフィスを開業して欲しいとの相談についてお話します。この様な相談が増えている背景には、東京都心部でのオフィス空室率の高さがあり、単純に大きく作って大きく貸すのが難しくなるのでは?
というオーナー側の危機感の現れだと思われます。

では、シェアオフィスを入れる事で、ビル全体の収支は改善するのでしょうか?事業上のメリット・デメリットは有りますが、うまくバランスを取れば他ビルとの差別化となり、収益性の向上も十分にあり得ます。

ポイントはシェアオフィスの共用部をビルの入居企業全社が利用できるというメリットをシェアオフィス以外のオフィス賃料に転換できるか?
という事になります。

最近では、ハイブリッド型勤務の大企業も増えて来ました。その為、想定MAX人数の容量でオフィスを借りるよりも、ミニマムで借りて、出社人数が多い時は、同ビルの会議室やラウンジで働く事ができると、多少の都度課金が掛かってもオフィスに掛かるコストパフォーマンスは後者の方が良いと思われます。シェアオフィスフロア自体の収支は、運営費や投資コストもかさむ為、通常のオフィスフロアの収支より低くなりますが、大切なのは、シェアオフィスの利用をビル全体に広げ、その他のオフィスフロアの単価や稼働率を上げ、ビル全体でどのように収支を向上させるか?という考え方です。それを実現するには、フロア毎でなくビル全体としてシェアオフィスの在り方を考える必要があります。

これまで、築古ビルの有効活用がメインだったシェアオフィスは、新築ビックプロジェクトでのハブ的な役割を担うなど、その役割は多様化してきていると感じます。


コロナ禍では、一時期全くなくなってしまった、イベント需要。
当社でも4か所ほどイベントスペースを運営していましたが、コロナ禍では、一旦イベント貸しを止め、可能な屋内スペースは月極のオフィスなどとして貸し出していました。
コロナが終わると、リアルへの回帰が進み、イベントも再興、更にコロナ禍ではEC化を進めた店舗が多かった反動からか、アフターコロナでは新商品の発表などでリアル店舗を一時的にオープンするポップアップニーズも再興してきています。
また建物内にとどまらず、屋外スペースや屋上など、個性的なスペースのイベント需要も増加しています。

当社の場合、当初よりビルの運用期間が短い場合など、固定店舗に長期で貸し出すことが難しい場合は、イベントスペースにて運用する場合がありました。
また、ビル全体や周辺地域の賑わいを創出したい場合も、常に新しいものが発信されるイベントスペースやポップアップショップなどを敢えて、併設する場合があります。
しかし、イベントスペースは季節性や価格設定の難しさ、案内や立ち合いの手間、継続的な宣伝費による支出、近隣からのクレームなど、運営面での負担も多く、一概に固定店舗より利益が出るとは判断しにくい部分があります。


事業者として、各メリット・デメリットを把握の上、収益重視型・話題重視型・両方のバランス型など、目指すべき目標をしっかりと立てブレの無い運営をすることが重要となります。
収益重視型の場合は、周辺相場や運営の手間、空室期間なども含め、固定店舗より収益がよいのか?話題重視型は、本当に話題となるイベントが誘致できるのか?求める「話題」とは何か?バランス型の場合は、収支の最低ラインや話題の最低ライン、どっちつかずの運営にならないか?など。
イベントは蓋を開けてみないと分からない部分も多く、その部分においては不透明な事業に進んで行く覚悟が必要です。

コロナ禍で進んだDX化は、働き方のみならず、店舗需要なども大きく変化させました。
今後の不動産運用はより柔軟な考え方が必要になります。

2023年11月 米国のシェアオフィス大手が、米連邦破産法11条の適用を申請した。「高額なリース費用や在宅勤務に伴う法人顧客の解約が響いた。」との事である。

一般的なオフィスに家具や内装をセットアップして短期利用契約で貸し出す事に加え、契約初期費用などを下げる事で、エンド利用料の単価を上げるのが、基本的なシェアオフィスのスキームであるが、エンド利用料の単価と一定の稼働率が保てなくなったと思われます。
シェアオフィス業は10年や20年単位の長期間を固定賃料でマスターリースする場合が多く、その契約時期によっては、固定賃料が事業の足かせになる場合もあれば、大きな利益を得る場合もあります。

ここ10年でシェアオフィスという形態は認知度も高まりプレーヤーも増えました。
またリース業も発展し、家具や家電、植栽、アートまでもリースする事が可能となった為、セットアップオフィスの意義も薄れてきています。ラウンジやキッチンなどの共用部をシェアする需要は引き続き高いと思われますが、昨今の建築費などの上昇で、共用部などの大きな改装は小規模事業者にはコスト負担が多く簡単ではありません。

シェアオフィスが浸透した現在では、他物件との差別化、適正な企画と運営、エンド価格設定が今まで以上に大切になってきています。
立地によっては、高サービスな高額商品が好まれる場合もあれば、ミニマムなサービスで適正価格の商品が好まれる場合もあります。

一方、シェアオフィスの認知度が高まった事で、住宅や大型オフィスとの複合で、建物全体の価値を上げる役割を担う事も増えてきました。

コロナ禍での働き方の変化により、これまで空室に困るビルの穴埋め的な需要であったシェアオフィスが、オフィスのあり方として一般化し、なくてはならないHUBになりつつあるとも感じています。

変化するエンドユーザーのマーケットを捉え、必要とされる機能を作り、適正な運用を行う事が新築でも築古の企画でも求められています。