「中古車業界の熾烈な戦い」


日本の中古車市場は、年間約500万台の取引規模を誇る巨大なビジネスだ。しかし、その裏では、消費者のニーズの多様化やインターネットの普及により、業界の構造が大きく変化している。新興勢力の台頭や既存勢力の苦境など、中古車業界における激動の現状を追った。

中古車業界における最大手は、ビッグモーターである。同社は全国に約1,000店舗を展開し、売上高は5,800億円に達する。しかし、その実態は決して順風満帆ではない。2022年3月期に発覚した不正会計事件により、同社は信用失墜と資金繰り悪化に陥った。2023年3月期の営業利益は300億円前後、当期純利益は200億円前後と見込まれており、手元の現預金も300〜400億円程度しかないという。このままでは経営危機に陥る可能性もある。

ビッグモーターのライバルとして名高いのが、ネクステージとIDOM(ガリバー)だ。両社ともインターネットを活用した中古車の買取・販売サービスを展開しており、近年急成長を遂げている。しかし、両社の業績も決して芳しくない。売上原価率は約80%と高く、営業利益率も約5%と低い。これは、中古車の買取・販売ビジネスの特性によるものだ。

中古車の買取・販売ビジネスは、消費者から中古車を買い取り、自社店舗で販売するか、業者間市場で売却するかの二つに分かれる。自社店舗で販売すれば、高い粗利益が得られるが、在庫管理や店舗運営にコストがかかる。業者間市場で売却すれば、在庫リスクやコストを減らせるが、粗利益は低くなる。時間の経過とともに価値が下がる中古車をどう扱うかが、このビジネスのカギを握っている。

中古車業界は、消費者のニーズや市場環境に応じて、柔軟に対応する必要がある。しかし、それは容易なことではない。ビッグモーターは不正会計により信用を失い、ネクステージとIDOM(ガリバー)は利益率が低く、競争力が弱い。中古車業界における熾烈な戦いは、これからも続くだろう。