これらの作品は、新約聖書の挿話をもとにしたオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』をリヒャルト・シュトラウスが極彩色の音楽でオペラ化したものです。その退廃的、耽美的な内容は初演されるや大反響を呼び、シュトラウスのオペラ出世作となりました。
これらの作品が人気になった理由は、いくつか考えられますが、以下のような点が挙げられると思います。
サロメというキャラクターの魅力。
サロメは美しく魅力的でありながら、残酷で狂気的な一面も持っています。彼女は洗礼者ヨハネに恋をしており、彼が拒絶すると復讐心から首を要求したという設定になっています。また、サロメが首を手にした後にキスするという有名なシーンも、これらの作品で生まれました。このように、サロメは愛と死というテーマを象徴するキャラクターであり、多くの観客や読者の心を惹きつけました。
シュトラウスの音楽の妙技。
シュトラウスは後期ロマン派を代表する作曲家であり、豊麗な旋律と大胆な不協和音を駆使して、サロメの物語を音楽で表現しました。特に、サロメが7つのヴェールの踊りを披露する場面では、色彩豊かな管弦楽法と変化する調性によって、サロメの感情や心理を描き出しました。また、ヨハネの首が運ばれる場面では、12音技法に近い手法を用いて、サロメの狂気や退廃を表現しました。このように、シュトラウスの音楽はサロメの物語に深みと迫力を与えました。
作品の社会的・文化的背景。
オスカー・ワイルドは19世紀末のイギリスで活躍した文豪であり、当時流行していたアール・ヌーヴォーや象徴主義などの芸術運動に影響されていました。彼は自分の同性愛や反権威的な思想を隠さずに表現しましたが、それが原因で社会から迫害されたこともありました。そのような背景から、彼は新約聖書の挿話を自分の視点で再解釈し、サロメというキャラクターを創造しました。この作品は当時の保守的な社会に衝撃を与えましたが、同時に多くの芸術家たちにインスピレーションを与えました。シュトラウスもその一人であり、オペラ化する際にはほとんど変更せずに忠実に再現しました。このように、作品は時代の空気や芸術の流れを反映していました。
以上のように、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』やリヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』は、サロメというキャラクターの魅力、シュトラウスの音楽の妙技、作品の社会的・文化的背景などが人気になった理由として考えられます。