イノベーションのジレンマとは、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論です。
クレイトン・クリステンセンというハーバードビジネススクールの教授が提唱しました。
イノベーションには、既存の製品やサービスを改良する「持続的イノベーション」と、既存の製品やサービスの価値を破壊して全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」があります。
巨大企業は、持続的イノベーションに注力して、既存の顧客や市場のニーズに応えようとします。
しかし、その結果、既存の製品やサービスの性能が顧客のニーズを超えてしまい、それ以外の側面に目が向けられるようになります。
一方、新興企業は、破壊的イノベーションに挑戦して、既存の顧客や市場には見向きもされないような新しい技術や製品を開発します。
その技術や製品は、当初は性能が低くても、新たな価値や用途を提供します。
やがて、新興企業の技術や製品は急速に進化して、既存の市場にも受け入れられるようになります。
そのとき、巨大企業は自社の製品やサービスの価値が毀損されてしまい、市場シェアや地位を失ってしまうことになります。
これがイノベーションのジレンマです。
つまり、合理的な判断で成功した企業が、その成功体験に囚われて破壊的イノベーションを見逃してしまうというジレンマです。
イノベーションのジレンマの例は、さまざまな業界で見られますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
【携帯電話市場】
日本の電機メーカーは、高性能なガラケーを開発していましたが、スマートフォンの登場によって市場を奪われました。
スマートフォンは当初は性能が低くても、インターネットやアプリなどの新しい価値を提供しました。
【カメラ業界】
日本のカメラメーカーは、高品質なデジタルカメラを開発していましたが、スマートフォンのカメラ機能の進化によって市場を奪われました。
スマートフォンのカメラは当初は品質が低くても、手軽に写真を撮影して共有できるという新しい価値を提供しました。
【自動車産業】
日本の自動車メーカーは、高性能なガソリン自動車を開発していましたが、電気自動車の登場によって市場を奪われつつあります。
電気自動車は当初は性能が低くても、環境に優しくて経済的な新しい価値を提供しました。
これらの例からわかるように、イノベーションのジレンマは、既存の製品やサービスの価値を破壊して全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」によって引き起こされます。