「どれだけのマルチタスクでもこなしてくれる優秀な若者を厳選して、好きにシフトを組んで時給800円とかで雇えた。言い方は申し訳ないが、経営者にとって本当にお得な時代があったように思う」


「バイトリーダーになるのも多くが大学を出た、 仕事の決まらない子たちだったと思う。 その分、経営者は人手とか、 人材育成とか気にしないで雇い、適当なときに辞めさせたりもした。 美味しい思いをすればその感覚から抜け出すのは難しい。ましてそれは長かった」

これは彼の話のみならず、他のフランチャイズオーナーはもちろん直営店舗の店長も含め た話だが、この「美味しい思い」 が忘れられないままであるのではないか、とのこと。

「つまり『コンビニは社会のインフラ』 なんて、そういう彼らがオペレーションしていたからこそ、ということ。その当たり前がいつまでも続くと、『我が企業の力』 だと、過信して きたのがコンビニ大手だ。なんのことはない、オーナーを実質的な時給で言ったら300円と か400円とかで使い、アルバイトを低賃金であらゆる仕事を押し付け、使い潰してきた。そ れで人手不足とか、長年やってきた私だからこそ疑問に思う」

2000年ごろの最低時給は東京都で703円、 東北や九州の大半では600円だった。たった20年余の話だが、日本がいかに時給を上げずに低賃金のまま、 団塊世代や団塊ジュニアの人口 ボーナスを利用してきたかがわかる。 それにしても最低時給、低いまま据え置いたツケがまわってきたようにも思う。

「当時、正社員になれず就職できない若者はとくに使えた。『国立大学を出ているのに』と いう若者が普通にバイトをしていた。 そういう若者も非正規のままコンビニで働いてくれ た。それも5年とか、20代すべてをコンビニバイトで使ってくれた者もいた」

これはコンビニに限らないが、 小売や外食など、人口ボーナスの恩恵を多くの業界が享受 し、それによって拡大してきたのは確かだ。

オーナーによれば1990年代中盤から2000年代は 「正社員採用並みの厳選ができた」ほ ど、コンビニで働く若者がたくさんいたと話す。

「若者がたくさん来た。 多くはフリーターで、いまなら大手企業に勤めても十分に活躍でき るほどの人材ばかりだったように思う」

かつて短いながらも上場企業に勤めた経験のあるオーナーはそれが実感できたと話す 「む しろ私たちの時代の正社員よりよほど努力家で、 仕事もできた」 とのこと。

「どれだけのマルチタスクでもこなしてくれる優秀な若者を厳選して、好きにシフトを組んで時給800円とかで雇えた。 言い方は申し訳ないが、 経営者にとって本当にお得な時代があったように思う」