実際に皆ものすごく差別されているが、賃金が低くて生活ができなくても“やらなきゃ”となっている

「正社員は断った場合に懲戒されて、それが有効になる可能性は実際にあるので、非正規の方が一見すると優遇されている。逆に非正規は簡単に解雇されたり、賃金が低かったりして、それと残業しなくていいこととはまったく割に合わない格差ではないかとずっと議論されてきた。非正規の差別がこんなに問題になる理由もそこにあって、“非正規雇用は楽”という常識すら通用していない。楽でもなく命令もガンガンされるのに、処遇だけがとんでもない格差のままだという背景も実際にある」

非正規で待遇が低いのに基幹化が進んでいて、重要な仕事をどんどん任されている。例えば、公務員などは部署によって8~9割が非正規ということが当たり前にあって、非正規がいないと回らない社会になっている。実際に皆ものすごく差別されているが、賃金が低くて生活ができなくても“やらなきゃ”となっているわけだ。

そこに付け込んで処遇を改善しなくてもいいということがずっと続いている。世界を見ると、そういう状況にある人は実際にストライキをする。もちろん、医療などであれば人命に影響が出ないように制限を付けてやるが、とはいえそのまま我慢するとはならない。これは日本だけすごく特殊で、なぜだか分からないがとんでもない差別があっても皆我慢して頑張る。頑張るから変えようとしないということが続いている」


「確かに派遣法は非正規を拡大した側面はある。しかし、今ある非正規の大半は法改正と関係なく昔からずっと自由で、日本は規制が全くない。昔はどこで非正規差別が広まったのかというと“主婦”。給料がどんなに低くても旦那に養われているという理屈でずっと正当化されてきた。

これがどんどん広がり今大問題になっているが、こういうことは海外の労働組合では全部批判していった。日本の場合は、大きな労働組合が主婦ならばいいだろうということで差別に加担した。その結果として今の状況があるので、法律ではなく、そういう労働組合やどういう社会を求めていくのかという労働者のある種の主張の仕方に問題があった」

「やはり自分たちの権利主張をするしかない。世界的にみても日本の労働分配率はものすごく低くて、日本だけ賃金が上がらない。ストライキの件数と比較すると、日本人は全然権利主張しないのでどんどん下げていいとなる。日本で利益を出している会社というのは、生産性を上げているのではなくただ賃金を下げているだけということがかなり指摘されるようになっている。経営努力の仕方というのもおかしな方向にいっているのではないか」