ゴールドならびに金鉱株投資は「投資の七味唐辛子」

SPDRゴールドシェア(ティッカーシンボル:GLD)は代表的なゴールドのETF(上場型投信)です。皆さんがその株を買うと、そのおカネで実際に金の延べ棒を買い付け、それを保管します。つまり実物資産に裏付けされた証券ということ。 https://t.co/AKxpBjdqnR

先ず金鉱株は長期投資には向きません。Buy & Holdはダメな投資戦略です。

産金会社は規模に応じてシニア・プロデューサーとジュニア・プロデューサーに分けられることが多いです。シニア・プロデューサーのグループをまるごと買うならGDXというETFが、ジュニアならGDXJというETFがあります。

シニア・プロデューサーの例は:
Newmont Goldcorp(NEM)
Barrick Gold(GOLD)
Newcrest Mining
Franco Nevada(FNV)
Agnico Eagle(AEM)
Kirkland Lake Gold(KL)
Anglogold Ashanti(AU)

ジュニア・プロデューサーの例は:
Kinross Gold(KGC)
Goldfields(GFI)
Yamana Gold(AUY)

もちろんこのほかにも沢山銘柄はあります。一般にジュニアの方が泡沫的で①確認埋蔵量が少なく、②採掘コストが高く、③したがって損益分岐点が高い企業が多いです。
つまり危険。

金鉱株は金価格にフォローの風が吹いてないとき買うべきではないです。とりわけジュニアは金価格下落局面ではこっぴどくやられます。

金鉱株の選別においては①確認埋蔵量、②生産コストが主なポイントになります。時価総額を確認埋蔵量で割り算すると1オンスの埋蔵ゴールドに対し株の投資家が幾ら支払っているか?がわかります。

ただ、かならずしも時価総額÷確認埋蔵量の数字が小さい企業の方が良いとは限りません。なぜなら①金山が政治的に不安定な国にある、②技術的に採掘が難しい鉱床となっている、③採掘権をめぐって係争などがある、などいろいろな要因が絡んでいることが多いからです。

たんに埋蔵量が多いだけではダメ。当期の決算で、ガンガン実際に金を生産し、売上高を挙げている企業を買うこと。なぜなら埋蔵量はまやかしであることもあるから。

採掘コストに関してはAISC(All In Sustainable Cost)が最も適切な尺度だと思います。

現在の金価格($1500)でAISCが$1500以上の銘柄は全く見込みがないので買ってはダメ。ちゃんとした企業のAISCは$700~$1200くらいのはず。

AISCが低い(=つまりロー・コスト)企業の方が経営は健全です。倒産もしにくいです。しかし株価が騰がるかどうか? に関してはもう少し精緻な議論が必要。

なぜならAISCが高い、ハイコスト・プロデューサーは損益分岐点も高いのでゴールド価格がその分岐点を超えた瞬間は「業績の変化率」としてはローコスト・プロデューサーより速くEPSが伸びているように見えるから。これをオペレーティング・レバレッジという風に表現することもあります。

だから金価格上昇局面で、わざとAISCの高い限界的(marginal)な業者の株を買い、「えいやあ!」と値幅を狙うトレードの仕方もあります。これはとてもハイリスクなので儲からなくなったら、直ぐに降りること。AU、GFI、HMYなどはそういうトレードの仕方をすべき銘柄です。

もっと王道な銘柄ということになるとニューモント(NEM)、バリック(GOLD)などになりますが、冒頭で言ったように金鉱株はBuy & Holdには向かないので「業績の安定」とか「生産高の成長可能性」などの空虚な妄想、期待からこれらの株を買い持ちで放置しないこと。

ゴールドならびに金鉱株投資は、投資の王道ではありません。「投資の七味唐辛子」くらいに考えるべき。だからポートフォリオの1割を超えてこれらの銘柄を組み込むのは狂気の沙汰です。