日本は横並びの勤務評価

アメリカで仕事して、アメリカ人は本当にデータ・ドリブンだなと痛感しました。そこへ行くと日本人はフィーリングで意思決定している(笑)

しかも、日本では自分たちがやっているのは、たんなるムードやセンチメンタルな発想での意思決定だ…と言う自覚はゼロ。

もうひとつ、日本人が決定的に弱いのは原因分析。データ見て(これはおかしい!)と冷静に現状把握しなおすことが絶望的に不得意な国民性。

面白い統計、見せましょうか?
たとえば第二次大戦。真珠湾攻撃前夜、米国の保有潜水艦数は112、日本は195でした。終戦時の米国の潜水艦数は232です。

アメリカ軍はそれだけの潜水艦で1079隻の日本の貨物船を撃沈しました。一方、日本の潜水艦が撃沈したアメリカの貨物船数は170隻。

その結果、日本の輸送船のトン数は、こんなに減ったのです。1943年頃、日本を出た補給船が南方の島に到着できる確率は50%でした。任務を終え、日本に帰ってこれたのは30%のみ。

日本の船乗りは「太平洋ではアメリカの潜水艦がウヨウヨ居る。だからシンガポールから日本まで、アメリカの潜水艦を伝って歩いて帰れる」と冗談を言うほどアメリカの潜水艦に遭遇した。

でも、その「体感速度」は両国の保有潜水艦数と比べて、正しくない!

日本の潜水艦は、世界最高の技術でした。日本の魚雷もアメリカの軍人が悔しがるほど素晴らしい性能。それなのに、撃沈した敵船舶の数にこれほど違いがあるのは、なぜ?

その理由は、日本の暗号がアメリカに解読されていたから。だからアメリカの潜水艦は日本の補給船の通る位置を正確に事前に知り、待ち伏せした。

前線のゼロ戦に交換部品が届かない。南方に展開する兵士に兵糧や弾薬が届かない。タンカーが撃沈されて燃料の郵送に困る……そういうことが1943年の時点で明白だったのに(これはおかしいぞ)と誰も考えなかった。

日本軍は「我が国の暗号は解読不可能である!」というゼッタイの自信を持っていました。ところが日本軍の暗号は悉く解読されていた。それも味方のミスとかそういうのじゃなくて、システマティックに、徹底的な正攻法で解読されていた。

アメリカ軍は日本とドイツの暗号を解読するために合計1万人の女学生を雇い、人海戦術で「パラレル・コンピュータ(並列演算装置)」を実現しました。暗算を分業することで刻々と変更される日本の暗号をどんどん解読して行った。

ワシントン郊外の経営の行き詰っていた女子大のキャンパスをまるごと軍が買い取り、それを暗号解読センターにした。

1万人の女学生を住まわせるために女子寮を造成した。

彼女たちは毎日百通を超える日本軍の交信を傍受し、輸送船の位置、太平洋の隅々までの天候・気象の状況などをリアルタイムで把握

それなのに現代でも日本では「太平洋戦争のとき、暗号は読まれていた?」とか水掛け論をやっている(笑)

日本人は「アメリカの物量作戦にやられた!」と言う。たしかにその側面はあるけれど、それ以上に諜報(インテリジェンス)の戦いに、日本は完敗していた。

たとえば日本の輸送船は「正午位置」を報告する習慣がありました。これはアメリカに自分の位置をわざわざ教えるような行為。

よく「ビットコインは量子コンピュータが登場すれば無価値になる」って議論されますよね? あれと同じ。日本との諜報戦で、アメリカは「量子コンピュータ」に相当するマンパワーを投入し、反復し、なんども日本の暗号を解読したのです。

もちろんそこにはジェネビーブみたいな天才的な人材の存在があるわけだけど、単純に交信数が多いので、手分けして解読する必要がある。それをアメリカはベルトコンベアー式に手分けしてやった。だからこれは「個人の勝利」ではなく「組織力の勝利」

日本人は諜報(インテリジェンス)ということに無頓着。たとえばファーウェイのネットワーク機器を「安いから」という理由で平気で買ったりする(笑)

そんでもって「憲法9条改正せよ!」って主張しているわけだが、そりゃ改正する必要もあるかもしれんが、インテリジェンスがこんなガバガバで、どうやって戦争するんじゃい?(笑)

アメリカの投資銀行のボーナス交渉の話すると、僕がどれだけ数字を上げているか部長が把握しているだけでなく、他の上位20社(1~2社の例外はあります)全ての、僕のライバルの水揚げの数字を、1ドル単位まで正確に把握していました(笑)

機関投資家向けセールスマンは基本、自分のベース・サラリーの7倍の売上高を上げないと「お荷物」と思われます。首を切られるリスク大。

ベース・サラリーの7倍以上の売上高が発生した場合、その「上回った部分」に対して「それじゃこのうち幾らを本人にボーナスとして払おうか?」という議論になります。

その場合、他社のライバルと比べた順位、どれだけ社内のリソースを費消したか?など全てデータをチェックされます。

だから「入社何年目は横並びで幾らくらいボーナスが出る」とかの、デタラメな決断はしません。そんなコトしたら、士気低下するに決まっています。

ボーナスには「減点(ペナルティ・ビッド)」もあります。自分の担当顧客がトレーディングデスクに損をかけたら、それは僕のボーナスから差し引かれます。

IPOの玉を顧客に渡して、顧客がそれを売り抜け、デスクに負担をかけたら、それもボーナスから減点(笑)

そういう歴史が、コンピュータの打ち出しで、フンドシみたく長ーく全て網羅されている。それをもとにボーナスを決めます。

ある意味、フェアです。上司と仲良しとか、ウマが合うとか、あいつは東洋人だから気に入らないとか、そういう個人的な感情が入り込む余地はゼロ。

いまSaaSで個人の仕事上での貢献をデータ化することはとてもカンタン。だからデータによる評価は、アメリカではどんどん進行、高度化している。

それと対照的に、日本は横並びの勤務評価。これは何も評価してないのと同然。こんなことやっていてパフォーマンス期待するほうがおかしい。