ウーバーの主幹事(モルスタ)がリフト(LYFT)株をショートした?

リフト(LYFT)、グリーンシューが行使されそう。

ウーバーの主幹事(モルスタ)がリフト(LYFT)株をショートした疑惑が出ているとゼロヘッジ(→ゼロヘッジは株式の引受け実務を何も知らないど素人)

モルガンスタンレーはこの噂を否定(CNBC)→当たり前。

モルガンスタンレーはこの件でFINRAから調べられているらしい。

ついでに今日引け際に出た「モルスタがリフトをショートしたのでは?」という疑惑についても整理しておきます。

4月2日にタブロイド紙、ニューヨーク・ポストが「モルスタがリフトのベンチャー投資家に対し、ポジションをヘッジするための仕組債を販売している」という記事を掲載しました。

これは法的にはグレーというか、たぶんペケだと思います。

つまりIPOするにあたって既存株主は主幹事(リフトの場合はJPモルガン)との間でロックアップ契約(180日間株を売らないと言う合意)を交わします。でもこっそりとダウンサイドを仕組債でヘッジするというわけです。

そういう店頭仕組債は簡単に組成できます。だからリフトのシ団に入ってない投資銀行がそのような勧誘をする可能性はあります。しかしそれは極めてリスキーな行為だと思います。モルスタは「そんなことしてない!」と否定しています。

なぜリスキーか?といえば紳士協定違反だから。もしライバル投資銀行のIPO案件がわざとズッコケるように仕向けるなら、それはウォール街の掟違反です。そういうことをやっているという話は聞いたことアリマセン。

ましてや今回モルスタはUberの主幹事に内定しており、あと数日で売出目論見書を刷る立場にあります。今回の噂でFINRAは内定調査に乗り出したらしいです。FINRAとは「日本証券業協会」みたいな業界団体。

FINRAが動けばSECの耳にもその話は入ります。SECはS-1(=売出目論見書のたたき台になる書類)を「出し直し!」と突き返すことはカンタンにできるので、モルスタに意地悪することは容易です。

だからモルスタはこのタイミングで監督当局の心証を悪くするような行為をする筈がない。もしモルスタが睨まれたなら、ゴールドマンは直ぐUberに対し「この際、モルスタは切りましょう!」と進言するはず(笑)

モルスタのライバルはJPMやリフトではないです。モルスタのライバルは、同じシ団に名前を連ねているGSとかメリルです。最後の最後までプロスぺクタスのどの位置に自分の会社の名前が刷られるか?をめぐって抗争しています。

あとゼロヘッジ(=クソなサイトです。誤りだらけなので、参考にしないで!)は「モルスタがリフトをショートしている!」と報じています。これは滑稽な指摘です。

なぜならリフトはナスダック上場銘柄であり、マーケットメーカーは取引を成立させるために常に客注に対し「買い向かい」「売り向かい」しているから。つまりその「売り向かい」はショートにほかなりません。

これに関しモルスタは「わが社はリフトの上場後取引の1.3%しかショートしてません。これは通常のマーケットメーキングの過程でショートしたものです」と言明しています。僕はモルスタの言い分が100%正しいと思う。

そもそもモルスタが「いじわるのためにリフト株を叩き潰してやれ!」と思っているに違いないと考える時点で、ゼロヘッジは引受けの実務がぜーんぜんわかってない。むしろリフト株が下落して失禁するほど恐怖を味わっているのはモルスタです。なぜならUberの妥当価格も下がるから。

リフトはモルスタにたいし「場合によっては訴訟に踏み切る」というレターを出しています。これはモルスタにとっては、とても、とても、とても、とても、とても苦しいです。なぜなら訴訟されたら目論見書の中の「リスク開示」の部分で「主幹事が訴訟された」と開示しないといけないから。

今頃、モルスタのジェームズ・ゴーマンCEOはリフトの経営陣のところへ飛んで行って、「靴ペロ」しているはず。「すみません。ウチじゃありません。堪忍して!」と。