オーバー・アロットメント・オプション(別名グリーンシュー・オプション)の仕組み

オーバーアロットメントは既存株主から借りるのではありません。新株(つまり追加で刷る)です。

だからシューが行使されたら株数が多くなります。調達金額が多くなります。

オーバー・アロットメント・オプション(別名グリーンシュー・オプション)の仕組みがわからない人が多いので、もう一度説明します。

なおこの概念は難しいので投資銀行に勤めている社員でもシンジケート部くらいしかその仕組みは知りません(笑)

まず名称を解説します。
オーバー・アロットメント・オプションのオーバーは(過剰に)という意味です。アロットメントは「株を渡す」ことです。オプションは主幹事に与えられた裁量です。

つまり「余計に株を渡す裁量権」のこと。

それがどうして「グリーンシュー・オプション」と呼ばれるか?といえば、1960年にグリーンシュー・カンパニーが初めてこの方式でIPOしたからです。

当初は「グリーンシュー・カンパニー方式」と呼ばれていましたがそれが短縮されグリーンシューになりました。

グリーンシュー・カンパニーはこんにちのストライドライトです。

さて、ここからが実務の説明です。IPOに際しては「人気が出過ぎた」「突然センチメントが変わり急落した」など、とかくハプニングがおきやすいもの。

そこで主幹事証券が安定操作をします。しかし安定操作をする際に「実弾」が必要です。

つまり買い支えするなら現金が必要だし売り向かって冷やすなら「冷やし玉」と呼ばれる、売り向かえる株が必要というわけ。

安定操作のやり方は投資銀行によっていろいろクセがあります。

ただ一番フツーのやり方は、もしホットディールなら売出目論見書に刷り込まれている「公称」株数より多い株数(普通15%)を投資家に先に渡してしまうわけです。

たとえば「今回売出し株数百万株」なら実際には115万株を投資家に渡すわけです。この15万株が「売り過ぎ」の分です。これは俳句の「字余り」みたいなものだと思ってください。つまり5・7・5のリズムは崩れるけど、まあいいやという感じです。

いまIPO後の株価がずっと値決め価格より上なら、迷わずオーバー・アロットメント・オプションを行使します。それは「主幹事は俺様だ!だから15%余計に売る!という決断は俺様が下してオッケーなのさ!」という主幹事の独断と偏見に他なりません。

次にIPOが公募価格を割り込みそうになった場合を考えます。

そのときは主幹事が「実は15%余計に売り過ぎちゃった!その分は…買い戻さなきゃ!」と売り過ぎた(=ショート)のケツ入れとしての買い注文を入れるわけです。

だから値決め価格付近で主幹事の買い(Syndicate bid)で値が踏みとどまることが多い。(リフトの場合はアッサリとbidがなぎ倒されました)
(日本では『誠意』などと言われることが多い。)

予め「売り過ぎておいた15%」を買い戻したところで主幹事の買い支えのbidは消えます。株価はそこからさらに下がるでしょう。

この場合、主幹事は先ず15%余計にショートし、それを買い戻したわけだから、結果は「チャラ」です。

つまりオーバー・アロットメント・オプションは、なかったことになるわけです。だからなにもしなくていい。SECに対する届けも必要なし。

さて、一度公募価格を割り込み、主幹事が15%の売り過ぎ分を主幹事の買い支えで買い戻したディールが、ふたたび株価上昇したケースを考えてみましょう。

その場合、主幹事は頃合いを見計らい公募価格より上で再び15%を売り直すことがあります。

すると再びIPOの際、わざとこしらえた「15%売り過ぎ=字余り」の状態にもってゆくわけです。そしてSECに対して「オーバー・アロットメント・オプションを行使します!」と報告する。

すると発行体は実際には売出目論見書に刷られた株数より15%多い株を発行したことになるのでその代金が発行体に転がり込むとともに発行済み株式数はその分増える。これは投資家から調達したカネなのでSECに届けを出す必要がある。

トレーダー的には(そうなのね、オーバー・アロットメントを行使したということは、やっぱり買い気が強かったんだし、もう主幹事に在庫はないんだな)という理解になり、これは株価先高要因です。

結論的には「ホットディールなら行使されるし、コールドディールなら行使されない」ということだけ覚えておけばいいです。

リフトは来週の値動きにもよるけどたぶん行使されます。